かつての外換銀行(いまのハナ銀行、2008年7月31日撮影、写真:ロイター/アフロ)

 2022年8月31日、韓国政府と米系私募ファンド、ローンスターの国際紛争に関して、韓国政府に2億1650億ドルの賠償責任があるという判定が出た。

 ローンスターの要求額の4.6%分だったが、韓国政府は異議を申し立てる方針だ。

 大統領、首相、副首相、法相など現職高官の多くが関係者として関与した激闘は延長戦に入る可能性もある。

悪縁は20年間

 利子まで含めると韓国政府の賠償額は3100億ウォン(1円=10ウォン)になる。300億円ほどだ。

 ローンスターが韓国政府を相手に「多国間における投資家と国家間の紛争解決」(ISDS)を求めて世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」(ICSID)に紛争仲裁を求めたのは2012年11月だった。

 ローンスターは2000年代に入って大手銀行の外換銀行(いまはハナ金融グループ傘下のハナ銀行)を買収し、その後売却した。

 この過程で韓国政府が売却承認を遅らせたことなどで損害を被ったなどとして賠償を求めた。

 それから10年間、ローンスターと韓国政府間で激闘が続いた。ローンスターは46億8000万ドルもの賠償金を求めていた。

 仲裁機関での法的な闘いは10年間だが、韓国政府とローンスターの「悪縁」は20年に及ぶ。

 この間、韓国の金融界と経済官庁で「ローンスター」は最大の頭痛の種だった。

 すべての始まりは、1990年代末の「IMF危機」だった。未曽有の経済危機は韓国の銀行を次々と経営危機に陥らせた。

 1967年に外国為替専門銀行としてスタートした韓国外換銀行も例外ではなかった。

 外換銀行は中央銀行である韓国銀行と並んで「働きたい銀行」として人気が高く、給与水準も高いエリート銀行だった。