水質汚染が深刻な洛東江(写真:CC 表示-継承 3.0 非移植

(羽田 真代:在韓ビジネスライター)

 朝鮮半島東部を南北に走る太白山脈に端を発し、大邱市、釜山市などの主要都市を貫流して朝鮮海峡に注ぐ「洛東江(ナクドンガン)」。この河川は全長525キロメートルと、韓国政府統治下で最長である。

 この洛東江、以前より「川の色が緑色になった」と汚染が噂されていたが、ついに毒性物質が検出された。

 今回検出されたのはミクロシスチン(韓国ではマイクロシスチンという)だ。

 愛知県衛生研究所のホームページにこの物質についての解説があり、「毒性は海洋天然毒であるテトロドトキシンやサキシトキシンより弱いものの、青酸カリよりはるかに強力である」「マイクロシスチンを投与されたマウスは麻痺や四肢の先の貧血、呼吸障害などを起こし、1時間程で死亡する」と書かれている(愛知県衛生研究所は「マイクロシスチン」と表記しているのでそれに従った)。

 ミクロシスチンは、青酸カリより最大200倍もの毒性がある恐ろしい物質だ。こんな物質が体内に入り込めば、人間はどうなるだろう。

愛知県衛生研究所

 1996年2月にブラジルで、ミクロシスチンに汚染された水を患者の透析治療に使用したところ、130人のうち101人が肝不全となり、50人が死亡したという事故が起きた。水源には有毒な藍藻が発生していたそうだ。ミクロシスチンは、この藍藻から生産される。

 このような物質を放置していれば、韓国もブラジルのような悲惨な事故につながる可能性がある。

 韓国の洛東江ネットワーク・大韓河川学会などが2022年8月31日に発表した嶺南(ヨンナム)圏地域の水道水緑藻調査結果によれば、この1カ月余り、釜山、慶尚南道(ギョンサンナムド)、大邱(デグ)、慶尚北道(ギョンサンブクド)地域の家庭と食堂など22カ所の水道水標本のうち、6カ所(調査対象の27%)でミクロシスチンが検出されたという。

 2016年に慶尚南道・昌原(チャンウォン)にあるアパートからミクロシスチンが検出されたことはあるが、慶尚南道全域で同物質が検出されたのは初めてのことだ。

 検出量は、米国・カリフォルニア州飲用水の基準値の1.7倍から5.8倍に達する。ちなみに、韓国にはまだ規制基準がない。