従業員の「ワンオペ死」が批判を集めたすき家(写真:アフロ)

(山本一郎:次世代基盤政策研究所理事)

 参議院選挙が6月22日に控えているからか、最近政治ネタや大企業ネタでの炎上事案が増えてきました。

 先日、共産党が筋の悪い「大企業の内部留保を吐き出せ」という主張を再び始めて、委員長の志位和夫さんが重ねて大企業の内部留保への課税に言及し、議論となりました。

 大企業に限らず、企業は課税対象となる利益から納税をした後、その余りが内部留保となり、次年度以降の投資や運転資金に回るのが原則です。一度税金を払った残りである内部留保に対して、再び課税をするというのは単なる二重課税であることぐらい、普通の社会人なら知っている話です。

 それでも選挙の前に共産党やれいわ新選組など野党がこんな無理筋の話をするのは、彼らの支持層が企業の実務や経理を知らないような、あまり所得が高くない人であり、そういった人々が社会に溜めている不安を起爆剤に、「現状批判票」をかき集めることが議席確保に繋がっているからに他なりません。

 最近、急に盛り上がったインボイス制度反対にしても、そもそも確定申告もちゃんとしていないような個人事業主やフリーランスの人が消費税分を上乗せで請求しているのに消費税を納めていない「益税」の問題がある以上は、「ちゃんと納税しろよ」で終わる議論じゃないかと思います。

「ガソリン税が二重課税だ」と言い出したり、安定財源が必要だと言いながら消費税に反対したりする理由も、基本的には税の仕組みを分かっていない人を煽っているからのように見えます。

 もちろん、ガソリン税・石油税の納税義務者は石油元売り会社などであるのに対し、消費税はガソリンを購入した消費者が納めるものですから、租税の仕組みからして二重課税とは解されません。日本よりもはるかに高い消費税など間接税を課している国で、そのような主張をしている野党は泡沫ばかりです。

 これらは知らない人の不満を煽るものであると同時に、言いがかりのような無理筋を吹っ掛けられても、反論したり、叩き返したりできない霞が関のようなお役所や企業などがやり玉に挙がるケースも多いように感じられます。

 当事者である役所や企業から反論されたり、名誉棄損だと裁判を起こされたりすることもないので、結果的に事実に基づかない情報に踊らされるのは知らない人ばかりという状況になり、果ては大企業と政官の癒着だという陰謀論にさえなり得ます。