ウクライナのゼレンスキー大統領(提供:Ukraine Presidency/ZUMA Press/アフロ)

(在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人)

[ロンドン発]英国防情報部は5月13日、「ウクライナ軍は東部ドンバスで試みられたロシア軍の渡河作戦を阻止した」とツイート。ルガンスク州の主要都市セベロドネツク西方でドネツ川を渡ろうとしたロシア軍は1個以上の大隊戦術群(BTG)の装甲機動部隊と、舟の上に板を敷いて渡る「舟橋」の装置を失ったと指摘した。

https://twitter.com/DefenceHQ/status/1524979878654840833

ロシア軍の渡河作戦を阻止

 筆者は4月27日に「英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)」で開かれた欧州大陸の渡河作戦に関する会議に終日参加したので、作戦の難しさが少しは理解できる。戦場全体に高性能センサーが普及し、精密な砲撃が可能になった今、橋頭堡や舟橋はこれまで以上に危険にさらされている。ロシア軍のウクライナ侵攻でその難しさが改めて浮き彫りになった。

 河川は国境を形作る自然の障壁だ。何世紀にもわたり渡河作戦の遂行能力が戦争の行方を決してきた。機械化戦争の時代に重視された渡河速度も主要国家間の戦争が激減したことで重要性が低下した。冷戦終結に伴い北大西洋条約機構(NATO)は渡河作戦の遂行能力を失い、水陸両用車の開発もほとんど行われなくなった。

 英国防情報部は「争いのある環境で渡河作戦を行うのは極めて危険であり、今回の失敗はロシア軍司令官がウクライナ東部での作戦を進展させるために受けている精神的な圧力を物語る」と分析する。SNS上では5月9日にすでに、ドネツ川を渡ろうとするロシア軍をウクライナ軍が攻撃し、舟橋やタグボート、戦車を破壊した衛星写真が投稿されている。

https://twitter.com/UAWeapons/status/1523752742820343808