「現場改善の要諦は、自働化や品質保証体制によってQを確保した上で、Dの管理(ジャストインタイムによるリードタイム短縮)に専念することにある。そうすれば現場は強くなるし、C(収益)は後からついてくる」
前回は、本流トヨタ方式のこの教えを定量的に説明する理論「Jコスト論」のあらましについてお話ししました。今回は、「Jコスト論」を活用して、「大ロット生産」にまつわる誤解について説明したいと思います。
「まとめて作れば安くなる」の根拠
世間一般に「量産効果」という言葉がよく使われています。誰もがその言葉を受け入れて、「大ロットでまとめて作れば安くできる」と信じているようです。
一方、本流トヨタ方式では「ジャストインタイム」という概念にのっとって、「必要なモノだけを、必要な時だけに、必要な量だけ作る」ことを説いています。大ロットではなく、「小ロットで回数多く作ること」を推進しているのです。
一体、どちらが望ましいのでしょうか。「Jコスト論」を使って考えてみましょう。ここでは次のようなモデルを想定して比較してみます。
製品1個を作るのに要する正味の製造原価が100円、段取り替え費用が1回につき1万円、売値が150円。これが毎日1000個ずつ売れていき、売れたらすぐに代金がもらえるとします。
この場合、(A)毎日1000個ずつ作る、(B)3万個(1カ月分)を1回でまとめて作る、のではどちらが良いかを考えてみましょう。
まず、世間一般に平均原価と平均利益は次のように考えられています。
「平均原価=正味原価+段取り替え費用/ロットサイズ」
「平均利益=売値-平均原価」
この式を適応すれば、
(A)平均原価=100[円/個]+1万[円]/1000[個]=110[円/個]
平均利益=150[円/個]-110[円/個] =40[円/個]
(B)平均原価=100[円/個]+1万[円]/3万[個]=100.33[円/個]
平均利益=150[円/個]-100.33[円/個]=49.67[円/個]
となって、圧倒的に(B)の「1カ月分まとめて作る」の方が大きな儲けになります。この計算が「まとめて作れば安くなる」という考えの根拠になっているのです。