2005年、サンクトペテルブルクで山下泰裕氏と柔道の稽古をするプーチン大統領(写真:photoXpress/アフロ)

 邪悪で冷酷極まりない独裁者――。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対し、欧米など西側諸国はそのように悪の枢軸と見立てるイメージでほぼ一貫している。ウクライナ侵攻を国のトップとして命じ、ブチャ大量虐殺など目を覆いたくなる惨劇を招いた責任は極めて重いと言わざるを得ない。

 一方でロシア国内や国連の制裁決議案に同意しない国々に目を向けると、プーチン大統領への見方は大きく異なる。

ウクライナ侵攻後に支持率上昇

 特にロシア国内では軍事侵攻から1カ月が経過した3月下旬に同国の独立系世論調査機関「レバダセンター」が行った世論調査ではプーチン大統領の支持率が83%となり、侵攻前の2月の71%と比較し12ポイントも上昇。まったく理解し難いことだが、約4年ぶりに80%の大台にまで達しているという。

 ウクライナの「非ナチ化」を大義名分に政権のプロパカンダのみを伝える国営放送と情報統制によって高齢者や地方に住む国民を“洗脳”し、軍事侵攻を正当化するロシア政府の計略はこの支持率だけでみればおおむね功を奏しているように思える。

 加えて、プーチン大統領にはロシア国内で「強い指導者」としての偶像崇拝のシステムもでき上がっているようだ。そのイメージ戦略に一役買っているのが、プーチン大統領のスポーツ歴であろう。特に格闘技は「達人」とされ、サンボは14歳から習い始め後に柔道も両立。サンボではレニングラード大学在学中に全ロシア大学選手権で優勝し、同時期にレニングラード(サンクトペテルブルグ)で開催された同州の大会ではサンボと柔道の両競技で優勝も遂げている。

 全日本柔道連盟会長で日本オリンピック委員会(JOC)会長も務める山下泰裕氏を心から尊敬していると公言。2000年に来日した際には柔道の総本山である講道館で柔道着を着用し、練習にも参加した。