再びICBMの実験に踏み切った北朝鮮(写真:AP/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 韓国大統領選挙が終わり、3週間が過ぎた。ここに来て、尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の国防および対北政策ブレーンの輪郭が見えてきた。業務引継ぎ委員会の委員など中心人物のほとんどは、尹錫悦選挙陣営で活躍した、政策本部の責任者たちのようだ。

 さらに、韓国の脱北者も対北朝鮮政策で一役買うと予想される。今回の大統領選挙では、「国民の力」の脱北者国会議員である太永浩(テ・ヨンホ)議員、池成浩(チ・ソンホ)議員などの脱北議員による前例のない活躍が目立った。今後の尹錫悦政府においても、彼らの役割がより期待されている。

 補足すると、尹錫悦陣営の政策本部、組織本部、職能本部において、相当数の脱北者が公式に活動した。私自身もその一員として、その他の脱北者の専門家とともに、尹錫悦陣営の対北朝鮮政策の基本方針と計画に対して、多くの意見を伝えた。

 対北朝鮮政策に関して、脱北者の専門家が尹錫悦陣営に強くアピールしたことは大きく3つある。(1)北朝鮮政策の根本的な修正、(2)実利的な南北関係、(3)韓米日を含むグローバルな共同対応だ。何よりも、北朝鮮の核問題を含んだ南北関係の現状を、冷静に見極めることが重要だと強調した。

 文在寅政権の5年間は親北朝鮮的であった。その屈従的な政策によって、南北間における、政治・軍事的な対応力と相互影響力の公平性は破壊されたと言っていい。北朝鮮は、あたかも北朝鮮と韓国が主従関係にあるように勘違いしている。

 相手に有利なルールで競技をすれば、勝負は火を見るよりも明らかだ。核とミサイル、大量破壊兵器、サイバー戦力で先行し、比較的優位な立場にいる北朝鮮は、軍事力において韓国はこれ以上相手にならないと高をくくっている。