ロシアによるウクライナ侵略を受けて開かれた国連・安全保障理事会(3月18日、写真:AP/アフロ)

 国連は、「平和のための結集」決議に基づき「緊急特別会期(ESS)」を開催し、平和維持部隊の派遣を含む軍事的強制措置を採択すべきである。

 国連総会は3月2日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて「緊急特別会期/会合(Emergency Special Session:ESS)」を開催し、ロシアに対して軍事行動の即時停止を求める決議案を141カ国の圧倒的賛成多数で採択した。

 193の国連加盟国のうち、反対票を投じたのはベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国のみで、棄権は35カ国だった。

 日本を含めた90カ国以上が共同提案したもので、決議に法的拘束力はないものの、ロシアに対して「即時に完全かつ無条件で、国際的に認められたウクライナの領土からすべての軍隊を撤退させるよう」強い言葉で要請している。

 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「国連総会のメッセージは強力で明確だ。ウクライナでの戦闘行為を今すぐ止めろ。銃声を今すぐ静めよ。対話と外交への扉を今すぐ開け」とロシアに呼び掛けた。

 ロシア軍の即時撤退などを求める安保理決議案が2月25日、ロシアの拒否権によって否決されたことを受け、米国とアルバニアがESSの開催を提案した。

 安保理は27日に採決を行った。米欧など計11か国が賛成、ロシアが反対、中国とインド及びアラブ首長国連邦(UAE)が棄権した。

 ESSの開催要請に必要な9か国を超える国が賛成したことにより、安保理は、事務総長にESSの開催を要請した。ESSは2月28日から開催されていた。

 このESSは、1950年11月3日に総会で採択された「平和のための結集(Uniting for peace)」決議(総会決議377A)に基づくものである。

 拒否権制度は、集団的安全保障制度を実効的ならしめるために導入された。

 しかし、冷戦開始とともに拒否権は濫発され、むしろ常任理事国の国益のために拒否権を行使するという弊害が目立つようになり、当初想定された集団的安全保障制度が十分には機能しなかった。

 そのため、拒否権の濫用防止のため、いくつかの方法が編み出されてきた。その中の一つが、この「平和のための結集」決議である。この決議は、

①安保理が拒否権のために行動を妨げられたときは、総会に審議の場を移し、

②総会の3分の2の多数で集団的措置を勧告できるなど安保理が国際の平和および安全の維持のために果たすべき機能を総会が代行しうるようにするものである。

 今回のESSでは、「軍事行動の即時停止を求める」ものであったが、国連は、停戦勧告などの事態の悪化防止への暫定措置の要請(憲章第40条)から、経済制裁や金融制裁などの非軍事的強制措置の適用(憲章第41条)、海上封鎖などの軍事的強制措置の適用(憲章第42条)、国連軍の組織と制裁行動(憲章第43条)までの集団的措置を取ることができる。

 もし、ロシアが大量破壊兵器を使用した場合には、国連は、「平和のための結集(Uniting for peace)」決議(決議377A)に基づきESSを開催し、平和維持部隊の派遣を含む軍事的強制措置を採択することを筆者は期待している。

 以下、初めに、国連創設の軌跡について述べ、次に拒否権濫用防止の試みについて述べ、次に「平和のための結集」決議について述べ、最後に国連安保理の改革について述べる。