文在寅氏、退陣前に政権に仕えた人を公企業・公共機関幹部に任命

 文在寅・尹錫悦両氏の間で亀裂が走りそうな目下の問題は、文政権が政権末期のこの時期に乱発している「駆け込み人事」だ。人事権は大統領にあるとして、任期が迫った公共機関の幹部ポストに、自分の息のかかった人物を次々指名しているのだ。尹錫悦氏は、自分が政権についた段階では、公共機関の長が文政権時代に任命された者ばかりになってしまい、自らが望むような人物を起用することが出来ないのではないかと疑念を抱き始めている。

 現在、尹錫悦氏は5月10日の新政権発足前後に現職幹部の任期が満了する公共機関の把握を進めているという。

 大統領が直接・間接に組織のトップらに対する任命権を行使できる公共機関は、昨年の時点で350機関。その内訳は電力公社・仁川国際空港公社・鉄道公社などの公企業36、国民年金公団・国民健康保険公団・住宅公社などの準政府機関が96、その他の公共機関が218である。

 しかし、文政権が任期後半にこれらトップや幹部に対する任命権を積極的に行使したことから、3分の2を超える234カ所のトップらは任期が1年以上残っており、2年以上残っているものも151カ所(43.1%)ある。

 文政権は36公企業のトップのうち27社のトップを昨年任命、特に目立つのが韓国空港公社の社長と韓国馬事会の会長の人事であり、いずれも先月任命した。そうしたトップの多くは当該公共機関の業務に関係する業務の経歴はなく、文政権や与党の関係者である(韓国では「落下傘人事」と称している)。

 こうした人事の裏に透けて見えるのは、文在寅大統領の胸の中にある、新政権が樹立された後も政権への影響力を確保しようという思惑と、これまでの文政権に貢献した幹部の労に報いようという考えである。