注目すべきは、文在寅大統領が「なぜまだ月城1号基が稼動しているのか」と産業部長官を叱責した翌日、韓水原が緊急会議を招集して原発の早期閉鎖を決定した点だ。検察もそこを問題視し、文在寅大統領の関与まで視野に入れて捜査を展開したのだが、文在寅政権の強い反発で捜査は足踏み状態になった。捜査阻止の先頭に立った当時の秋美愛(チュ・ミエ)法務長官は、尹錫悦検事総長(当時)を懲戒処分し、業務停止命令を下して韓国社会を騒然とさせた。

 この事件は、尹錫悦氏を検事総長辞任に追い込み、政界入りさせる契機になっただけでなく、当時の崔宰亨(チェ・ジェヒョン)監査院長をも辞任・政界入りさせることになった。結果的に尹錫悦氏は大統領に、崔宰亨氏は大統領選挙とともに行われた鍾路区(チョンノグ)補欠選挙で国会議員に当選する快挙につながった。文在寅政権にとっては想像もしたくなかった事態を招いたわけだ。

法務部の圧力で捜査は尻すぼみに

 もう一つの蔚山市長選挙介入疑惑事件とは、文在寅大統領の親友である宋哲鎬(ソン・チョルホ)氏を2018年6月の蔚山市長選挙で当選させるために、大統領府が蔚山警察庁に相手候補に対する捜査を指示したという疑惑だ。検察は宋哲鎬氏や、宋氏の選挙キャンプの主要人物として大統領府との連絡を取り持っていた宋秉基(ソン・ビョンギ)氏、当時蔚山警察庁長だった黄雲河(ファン・ウンハ)共に民主党議員らを起訴した。韓国メディアによると、検察は、警察と大統領府、そして宋哲浩陣営の関係者を共犯と把握し、文在寅大統領の関連性を捜査しようとした。

 しかし、同事件も月城原発事件同様に、捜査を指揮していた検事らが法務部によって大勢異動させられたため、捜査はうやむやになった。現在は、宋秉基氏、宋哲鎬氏、黄雲河氏は裁判中だが、大統領府の主要関係者らは全員不起訴処分となっている。