(写真:ロイター/アフロ)

(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

『エルピーダの教訓 破綻から10年(上)(下)』──2022年2月25~26日、日経新聞に2回にわたって上記タイトルの記事が掲載された。また、日経電子版では、『坂本エルピーダ元社長「日本の半導体、なお再編余地」』と題するエルピーダ元社長・坂本幸雄氏へのインタビュー記事も掲載された(以下、これらをまとめて「特集記事」と呼ぶ)。

 エルピーダとは、1999年12月に、NECと日立製作所からそれぞれDRAM部門を切り出して合弁することによって設立されたDRAM専業メーカーである。当初は「NEC日立メモリ」という会社名だったが、2000年9月28日に「エルピーダメモリ」に社名を変更した。そして、約10年前の2012年2月27日に経営破綻し、2013年7月31日に米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)に買収された。

2012年2月27日、エルピーダメモリが会社更生法の適用を東京地裁に申請し受理された。同日、記者会見する坂本幸雄社長(写真:ロイター/アフロ)

 エルピーダが経営破綻してちょうど10年が経過し、現在国内外で「半導体」が注目されていることもあって、日経新聞が2日にわたる特集記事を企画したのだろう。

 しかし筆者はこれらの特集記事を読んで、うんざりしてしまった。元社長の坂本氏をはじめ、特集記事に登場する人たちに対して、「まだそんなことを言っているのか」「まだ自分の失敗を認めないのか」「“教訓”という記事なのに何も“教訓”になっていないじゃないか」と思ったからだ。

 本稿では、筆者がなぜこのように思ったかを論じる。まず、日経新聞の特集記事において、筆者が「まだそんなことを言っているのか」もしくは「今頃何を言っているんだ」と感じた箇所を示す。次に、なぜ筆者がそう思うかということを論じる。その中で、特集記事に出てくる人々は、10年経っても何も分かっていない実態を明らかにしたい。

 最後に、坂本氏をはじめとして特集記事に出てくる全ての方々には、エルピーダの倒産を経てMicron Memory Japan(マイクロンメモリジャパン)の社長になった木下嘉隆氏が2019年6月の記者会見で「Micronになって本当によかった」と述べた事実を突きつけたい(「『Micronになってよかった』という言葉の重さ」EE Times Japan、2019年7月8日)。

 特集記事に名前が出てくる全ての人たちは、この言葉の意味を深く噛み締めていただきたい。