ふるさと遺産として保存されるはずだったが

 大杭橋は、1919年(大正8年)に作られた吊り橋だ。千曲川左岸にある小諸市川辺地区を小諸の中心部と結ぶほか、電気を供給する役割も担う、地域のインフラとして重要な橋だった。

 ただ、1995年には下流に小諸大橋ができたことにより、大杭橋の重要度は低下した。また、大杭橋は1981年(昭和56年)に大規模な改修が行われたものの、老朽化のため最近では車も歩行者も通行できない状態になっていた。

 それでも千曲川に架かる唯一現存する吊り橋だったことなど、貴重な歴史的土木遺産であることから、2018年(平成30年)に「小諸ふるさと遺産」に認定され、保存されることになった。ところがその翌年に大きな損傷を受けてしまう。歴史的土木建造物としての価値を認められた直後の、この水害は残念でならない。

大杭橋左岸は橋桁が落ちて完全に通れなくなっているが、水害を受ける前に立てられた「老朽化のため通行止め」という看板がまだ残っていた

 長さ101m、幅3mの大杭橋は、完全に渡ることのできない橋となってしまったのである。

流されず残った左岸側の橋桁。木製の床には植物がはびこっているが、これはその先が流される前からこうなっていたと思われる
折れ曲がった橋桁を左岸側から見る

 左岸側のたもとには民家があり、実際に居住されているご様子なので付近は荒れた様子ではなく、リアルな生活感があった。では大杭橋の右岸側はどうなっているだろうか。