(高橋 義明:明海大学経済学部教授)

 政府はウィズコロナ推進のため、「ワクチン・検査パッケージ」実証実験に参加する飲食店、ライブハウス・小劇場、大規模イベントなどの公募を行った。「2回のワクチン接種記録証」または「PCR検査陰性証明」を持っている人を対象に、チケット購入や来場・入場の制限を緩める実験だ。

 イベントについては10月6日のサッカー・JリーグYBCルヴァンカップ準決勝、名古屋グランパス対東京FC戦から開始される。飲食店については埼玉県、大阪府など12道府県、ライブハウス・小劇場には愛知県、大阪府など4府県が応募し、順次開始される予定だ。

 筆者は昨年(2020年)春の段階から、PCR検査で陰性だった者は制限を緩和して知見を蓄積すべきと主張していたため、「ワクチン・検査パッケージ」実証実験は望ましい方向と考えている。しかし、そこには科学的な政策評価としての緻密な制度設計と事後検証のためのデータの収集が不可欠だ。

 実は大規模イベントの実証実験は、既に神奈川県が昨年秋に横浜スタジアムで行っている。本稿では大規模イベントを中心に、英国の実証実験とも比較し、「ワクチン・検査パッケージ」実証実験の成否の鍵を考えてみたい。

神奈川県が行った横浜スタジアム実証実験

 神奈川県は昨年10月30日~11月1日の横浜スタジアムにおける横浜DeNAベイスターズ対阪神タイガース戦で観客人数の上限を試合ごとに緩和して技術実証を実施した。東京2020オリンピック競技会場と使われることから知見の提供も目的にし、政府分科会にも暫定結果が報告されている。