やはりというべきか、お決まりの「状況を鋭意注視する」との言葉を繰り返すだけなのである。青瓦台は特別なコメントを出していない。北朝鮮が米韓同盟に亀裂を生じさせ、さらに内政干渉まで行っているにもかかわらず、緊急の国家安全保障会議(NSC)さえ招集していない。

 北朝鮮の金英哲(キム・ヨンチョル)統一戦線部長は11日に発表した談話の中で、「わが国家を敵として行う戦争演習をまたもや繰り広げる狂気を振るい始めた」と述べた。韓国は自国の安全保障のための演習を最小限の規模で行おうとしているだけだ。それを「狂気」と罵られたのに、何ら反発していない。

 事実上の更迭となった日本の相馬弘尚・前駐韓公使が、文在寅大統領の外交駆け引きのことを「マスターベーションをしている」とした発言が適切だったかどうかは別として、その発言の直後に韓国が同公使の解任を求めたのとはずいぶん対応が違う。「日本に対してはいくら強く出てもいいが、北朝鮮には追従する」という文政権の基本的なスタンスが、ここにもにじみ出ている。

次期外交院長の「北朝鮮寄り」発言は文在寅政権の本音か

 文在寅大統領周辺の人々の、北朝鮮寄りの態度はあまりにも常識を逸している。

 例えば、国立外交院の次期院長の発言も最近物議をかもしている。

 洪鉉翼(ホン・ヒョンイク)次期院長は8月10日にラジオ番組に出演し、北朝鮮のミサイル・長射程砲発射に関連して「挑発とは言えないだろう」「韓国は訓練するのに北朝鮮は訓練したら駄目だと考えるのは常識的ではない」と述べた。

 同氏はかつて「在韓米軍は過度に配備されているので、1万人ほど削減するよう提案すべきだ」と述べていたことも明らかになっている。

 果たしてこれが韓国政府の北朝鮮に対するスタンスなのだろうか。国立外交院長は新任の外交官の養成、外交安全保障政策の研究に責任を持つシンクタンクのトップだ。その院長にこのような偏った認識を有する人物を抜擢することが国益に合致すると文在寅氏は考えているのだろうか。

 こうした人物で文政権が固められているから、罷免された韓元局長のように、自身の所管と関係のないところでも批判する公務員が出てくるのである。いわば義憤に駆られての発言だ。

 そうした発言をことごとく踏みつぶすような体制に韓国政府は変貌しつつある。そのような言論弾圧をしなければ、文在寅政権はもう持たないところまで来ているのであろうか。