(写真:宮沢洋、以下特記のないものは同じ)

(宮沢 洋:BUNGA NET編集長、編集者、画文家)

「池袋建築巡礼」4回目の今回は、池袋西口利用者ならば誰もが知っているであろう、それでいて地元民にも詳細が分からない「ロサ会館」だ。西口のロマンス通り沿いにそびえるピンク色の総合アミューズメントビルと言えば分かるだろうか。

 私は、池袋駅徒歩圏に住んで20年になるが、この建物の設計者をずっと「黒川紀章」だと思っていた。なぜなら、私よりも長くこの地に住む知人にそう聞いていたからだ。外壁に執拗に繰り返される亀甲パターン(正確には八角形)、通常はこんな大面積では使わないピンク色。黒川紀章だと言われれば、なるほどそうかと納得してしまう。

 だが、偶然手に取ったこの本(右の写真)を読んで、設計者が黒川紀章ではないことを知った。

設計・施工:清水建設、竣工:1968年

 三浦展(あつし)氏が書いたこの本『昭和「娯楽の殿堂」の時代』(柏書房、2015年刊)は、実にすばらしい。「船橋ヘルスセンター」や「中山競馬場」など、建築関係者なら気になる大規模娯楽施設の来歴がドラマチックにまとめられている。ロサ会館も取り上げられており、かなり詳しいことが分かった。だが、「地元」かつ「建築系」の人間としては、さらに知りたいことが出てきてしまう。

 ロサ会館に取材をお願いすると、オーナー経営者である伊部季顕(いべすえあき)・ロサラーンド社長と、子息の伊部知顕(さとあき)取締役が話を聞かせてくれた。

左が伊部季顕・ロサラーンド社長、右が伊部知顕取締役。屋上のテニスコートにて。屋上テニススクールがまだ珍しかった時代に、ほとんど使われていなかった屋上をテニスコートに変えたのは季顕社長