(文:今井良)
2021年に開催予定の東京五輪。政府は新型コロナ対策とテロ対策も兼ねて、競技場への入場時、すべての人に対する「顔認証」の導入を検討していることがわかった。
スマホのロック解除や企業の入退室セキユリティーなどで、すでにこの顔認証は世界でも常識化しているが、このシステムがテロ対策にどれほどの効果を発揮するかは未知数だ。
だが、実は全国の警察が今年3月から、犯行現場等における防犯カメラ画像やSNS上の顔画像について、警察当局が持つ顔画像データベースと照合する「顔認証(顔認識)システム」の本格運用を開始していたことをご存じだろうか。
すでに、警察が捜査に関連して自前で持つデータと公のものとを突き合わせていることは、報道を通じて常日頃アナウンスされている。とりわけここ数年で注目を集めているのが、各所に設置されている防犯カメラ等の画像をつなぎ合わせて犯人を追跡する捜査手法「リレー方式」だ。
そしてこのリレー方式を一躍有名にしたのが、「警視庁捜査支援分析センター」(Sousa Sien Bunseki Center)、通称「SSBC」の存在である。
筆者は2014年に上梓した『警視庁科学捜査最前線』(新潮新書)でこのSSBCについていち早く取材し、全貌に迫っている。SSBCは2009年4月、警視庁刑事部の附置機関として100名体制で発足した。
「SSBCは、警視庁プロパーで捜査一課や機動捜査隊員だった職員と、民間でエンジニアを務めた経歴を持ついわゆる特別捜査官出身者で構成されている。プロパー組は豊富な捜査経験を、民間出身組はテクニカルな知識を事件捜査に活用してもらっている」(警視庁関係者)
この関係者によると、プロパー組と民間出身組の比率は現在、6対4くらいだという。豊富な刑事経験から紡がれる捜査センスと最新のデジタル技術に知悉している捜査員が、切磋琢磨しつつ日々の事件捜査に当たっているのがSSBCである。
東京都内の事件捜査において、このSSBCの活躍が近年目覚ましい。その最強の捜査手法が、前述した「リレー方式」と呼ばれるものだ。
その凄まじさを、取材に基づいたドキュメント形式でお伝えしたい。
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