(平井 和也:翻訳者、海外ニュースライター)

 近年、エスカレートしていた米国と中国の対立は、新型コロナウイルス問題への対応をめぐって、さらに激化している。

 そうした状況のなかで、国際社会における米国の国力の相対的な低下がしばしば指摘される。9月15日、米国のシンクタンク、ランド研究所のジェームズ・ドビンス氏(シニア・フェロー)とガブリエル・タリニ氏(政策アナリスト)が、米国の影響力の低下に関する共著論考を発表したので、その概要を紹介したい。

過去20年間で落ち続けている米国の外交成果

 論考のタイトルは「米国の外交政策の失われた世代(The Lost Generation in American Foreign Policy)」である。論考の中でドビンス氏とタリニ氏は、過去20年の間に米国の国際的な実績は大きく低下し、トランプ政権下ではその傾向がより顕著になったが、それはすでにブッシュ政権時代に始まっていたと述べる。

「最近のランド研究所の調査では、第2次世界大戦後の55年間で、米国の歴代政権が平均して1年に1回のペースで大きな外交成果を上げてきたことが明らかになった。しかし、2001年から外交成果のペースが4年に1回に落ち、その結果、米国の外交政策に失われた20年という空白が生じている」