(黒木 亮:作家)
ここ20年ほどの間に、インターネットやネット通販の発達で、生活が飛躍的に便利になった。一方で、個人情報漏洩がしばしば起きている。「お客様の個人情報が漏洩した可能性があります」という企業や役所からのメールを受け取ったことがある人は少なくないはずだ。中でも、クレジットカードや銀行口座などの情報が漏洩したときは、金銭的な被害も発生する。
実はロンドン在住の筆者も2004年に、英国の銀行の口座をハッキングされ、2万4800ポンド(当時の為替レートで約497万円)を勝手に送金されたことがある。幸い、このときはすぐに気づき、銀行に駆け付けて、すべての取引を取り消し、口座番号を変え、キャッシュカードや小切手帳も再発行してもらった。その9カ月後、銀行のコールセンターの職員も含む総勢41人の犯人が逮捕され、内部の人間の手引きによる犯行だったことが明るみに出た。
そうした経験もあり、筆者は日頃、キャッシュカードやクレジットカードの保管や個人情報の取り扱いについては、かなりの注意を払っているつもりである。しかし、また最近、クレジットカードの不正利用の被害に遭ってしまった。
不意に使えなくなったクレジットカード
事件は昨年5月23日にさかのぼる。
取材で訪れたミャンマーの古都マンダレーのレストランで、クレジットカードを使おうとしたら、取引が承認されなかった。翌日の晩、ヤンゴン国際空港の免税店でもカードが使えず、翌々日の朝、成田空港に到着後、リムジンバスのカウンターで乗車券を買おうとしたが、やはり駄目だった。
クレジットカードは、不正使用を防止するため、普段と違うパターンの使い方がされたとき、使用停止されることがある。ミャンマーは初めて行った国だったので、てっきりそれで使用停止になったのだろうと思い、東京シティエアターミナルの国際通話が可能な公衆電話から、英国のクレジットカード発行会社(銀行)に電話をかけた。しかし、非通知発信は受け付けないシステムになっているようだった。