はじめに
2011年3月11日14時46分、500年に1度とも言われる巨大地震が東北・関東地域を襲った。「東日本大震災」の発災である。その直後、20メートルとも30メートルとも言われる大津波が太平洋沿岸を襲い、3万人に近い尊い人命と家屋・港湾・田畑等を跡形もなく破壊したのである。
今回の地震は時間の経過とともに、その影響の大きさを痛感させられる。それは今までに経験したことのない複合災害だからである。
第1に、マグニチュード9(M9)というエネルギーを持った地震、第2に想像を超えた津波、第3に福島第一原子力発電所の事故、第4に青森から茨城に至る広域、さらに追加するとすれば地方自治体そのものが大きな被害を受けて機能不全に陥ったことである。
さらに政治体制について見てみると、平成7(1995)年の阪神・淡路大震災の時は村山富市政権であり、今回は青息吐息の菅直人政権の時である。日本最大の国難の時に弱体政権とは、日本国民にとって真に国難である。
今回の地震から色々な教訓を得ることができる。第1に政府・地方自治体・企業等の危機管理体制の欠如である。危機とは、自然災害・人為災害等の災害、60年安保・70年安保改定の時のような治安、そして最大のものは国家防衛と極めて範囲が広い。
危機への対応は、まず危機的な状況を作らないことであり、未然に防止できるようにあらゆる手段を駆使するとともに、保険がかけられるものはかけておくことが重要である。
次に最悪な事態を想定して対策を確立しておくことである。最後に危機が生起した場合は迅速・的確に対処し、被害の拡大を阻止(初動対処が重要)することである。第2は福島第一原発事故発生後の「対応のまずさ」である。
危機管理については別の機会に委ねることとし、本稿においては軍事行動における「作戦」の観点から特に初動対処は良かったのか、指揮官の位置は如何にあるべきか、緊急事態における組織はいかにあるべきか、指揮官の決心とは、原発事故対応作戦は主動的に行われたのか、について考察することにする。