(舛添 要一:国際政治学者)
新型コロナウイルスの感染の再拡大が止まらない。第2波の到来である。
7月29日には、遂に岩手県でも2人の感染者が判明し、これで全国47都道県全てに感染が広まった。タイミング悪くGo To Travelキャンペーンも始まっており、大規模な人の移動はウイルスを拡散させる。
ウイルスの潜伏期間が長いので、このキャンペーンが感染拡大にどれだけ影響するかは、8月以降に数字として表れるが、国民の不安を高めるような結果が出てくるのではないかと危惧している。
「有言“不実行”」の繰り返し
31日の感染者は、東京都では463人と過去最多で、神奈川県53人、埼玉県57人、千葉県35人と相変わらず高い数字で推移しており、首都圏はまさに一体である。
首都圏以外でも感染拡大は凄まじく、31日の数字を見ると、大阪府が216人、兵庫県が62人、愛知県が193人、福岡県が170人、沖縄県が71人と全国に広まっている。多くの自治体で、過去最多という不名誉な記録を更新している。
もはや「東京問題」とは言えないような状態であるが、第2波の震源地が東京であることは間違いない。中国の武漢で発生した新型コロナウイルスが世界に拡散していったような状況である。中国の初期対応の失敗に世界が怒っているように、菅官房長官をはじめとして東京の対応を批判する声が高まっても不思議ではない。小池都知事の対応は不適切であったと言わざるをえない。
要するに「有言“不実行”」こそが小池都知事の常套手段であり、口先で都民に警告を発するだけで、具体的な行動を伴っていないのである。小池都知事は、29日には、マスコミ各社の「単独」インタビューに応じている。マスコミ各社からの要望だろうが、各社に個別に応じるような時間があれば、もっと真剣にコロナ対策を実行すべきである。定例記者会見のときに話せば、一度で済む。マスコミを使っての自己宣伝と人気取りに終始している。
インタビュー内容を読んだが、たとえばPCR検査を一日1万件に増やすと言っている。しかし、どのようして実行するのか全く述べていない。保健所の体制をどう拡充するのか、民間の検査会社などをどう活用するのか、厚労省の規制をどう突破するのか、具体策がない。さらには、全く意味のない東京版CDCをまだ作ろうとしている。「都民の命を守るため、あらゆる策を総動員し」と述べているが(読売新聞、7月30日)、いつもこのような漠然とした言い回しであり、何も言っていないに等しいのである。
なぜPCR検査が増えないのか、なぜ日本の感染症研究所がアメリカのCDCに比べて酷いのかなど、小池都知事は問題の本質を理解していない。しかも、PCR検査数の恣意的発表に見られるように、情報公開が徹底していない。