不動産価格の上昇が止まらない韓国の首都ソウル

 不動産価格の急騰が続く韓国では、20~30代を中心に政府の対策への批判が強まっている。

 政権発足以来20回以上の不動産対策を発表したが効果は見えない。そんな中、政府与党は「首都移転」構想を持ち出してきた。

「首都圏の不動産価格安定のための根本対策として、国会、青瓦台(大統領府)、政府機関を世宗市に移転しなければならない」

与党院内代表が国会で演説

 2020年7月20日、韓国の国会で与党「共に民主党」の院内代表である金太年(キム・テニョン=1963年生)議員は、与党代表演説でこう切り出した。

「行政首都建設と公共機関の移転による効果は明らかだ。行政機能が地方に移転してもサービスの質が低下することはない。すでに多くの機関が移転し、オンラインでサービスを提供している」

 与党の院内代表が突然投げた政策は、韓国メディアでも大きな話題となった。

 なぜいま「首都移転」なのか。

 もともと文在寅(ムン・ジェイン=1952年生)政権は、2017年5月の発足以来、地域均衡発展政策に基づいて政府機関の地方移転を進めていた。

 だが、「首都移転」にまで踏み切ろうというのは、このところ「不動産急騰」に対して有効な対策を打っていないという世論の批判が強まっているからではないかとの見方が少なくない。

 もともとは進歩色が強い市民団体も連日のように政府の不動産対策を批判するなど、「支持層」の離脱も始まっており、政府与党が危機感を強めていた。