今後の日米経済関係をどう再構築していくか。

 米国でオバマ政権が発足して10日ほどたった頃、この難題に取り組もうとしている日米双方の関係者の間を、文字通りハシゴを外される思いを抱かせる情報が駆け抜けた。日本経団連がワシントンに置く米国事務所を3月末限りで閉鎖するというのだ。

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米国撤収を決めた御手洗経団連会長      〔AFPBB News

 経団連によると、米国撤収は財務上のリストラの一環。既に昨秋の大統領選前に決めていたことであり、「他意は全くない」という。それにしても、タイミングというものを考える財界人はいなかったのか。「どなたが大統領になろうと両国関係は変わらない」という間の抜けたコメントは、オバマ氏当選が決まった直後に麻生太郎首相の口から出たものだが、どうやら大企業のお歴々の思考レベルも似たようなものらしい。

 1990年代初頭、米国で巨額の対日貿易赤字への批判が高まる中、経団連は姉妹機関である経済広報センターの米国事務所をニューヨークに設け、97年にワシントンへ移転。2002年からは、経団連本体が中心となり、ホワイトハウスに程近い事務所を拠点に広範な活動を展開してきた。

 毎年のように地元シンクタンクとセミナーや昼食会を共催し、アジア・太平洋地域での自由貿易協定(FTA)や日米経済連携協定(EPA)に関する日本経済界の考え方を丁寧に説明した。全米各地を巡回する講演キャラバンなどを通じ、日米協会関係者らとの交流も推進。このほか、国務省や商務省、財務省、通商代表部(USTR)の幹部や議会関係者らとの懇談会を開き、2国間経済関係などについて意見交換してきた。

 4月以降はどうなるのか。東京の経団連本部がオピニオンリーダーの日本招致や、インターネットを活用した情報提供などで米政財界との関係維持・強化に努め、「現地の空気も留学中の職員らを通じてつかむことは可能」としている。だが、そんな片手間の作戦で米国事務所閉鎖の穴を埋めることができるのか。事は日本の国益につながる話だ。

首ひねる米民主党の知日派

 「米国経済がさらに悪化し、生産調整、雇用調整が進むようなことになると、米国が再び保護主義化するとの懸念は根強い。オバマ大統領が米国をどうリードし、米国民がそれについて行けるかどうかが問われている中、日本の協力は重要であり、問題の発生を予見し政治問題化を防ぐ、予防的コミュニケーションの強化が特に必要となっている」。2008年11月13日付の機関紙「日本経団連タイムス」はこう指摘していた。

 折しも、民主党支配下の米議会が可決した景気対策法には、公共事業での自国工業製品の調達を義務付ける「バイ・アメリカン条項」が盛り込まれた。このように、不況下の米国には保護主義的なムードが漂い始めている。