日本の中山間地域ではいまでも3世代が一緒に暮らすことが少なくない

 コロナウイルスがパンデミックスとなって世界を混乱に陥れている。日本も例外ではなく政治、経済、社会に大きな混乱と支障をきたしている。

 リンクが追えない感染者によるオーバーシュート(大規模流行)を回避するために、政府が密集する電車通勤の自粛、多人数が集まるスポーツ競技や大規模イベントの延期・中止要請などを行い、また外国が日本への出国を制限・禁止したことなどから、とりわけ経済活動の失速が大きい。

 そうした中で、学校や保育園・幼稚園など子供たちが多く集まる場所での感染予防が大切として休校・休園の要請も出され、子供たちの面倒を家庭で見る状況が現出した。

 その結果、仕事を休まざるを得ないなどから家計を支える収入減を引き起こす懸念なども高まり、政府は臨時休校で仕事を休む保護者への所得補償の新たな助成制度を打ち出した。

 同時に、個人事業主などの生活不安者・世帯への貸付支援策、公共料金の支払い困難な人への支払い猶予などの対応要請、税金や社会保険料の支払い困難な事情ある人に原則1年間の納付猶予・延滞金免除など、当面の様々な支援・対応策を打ち出した。

 こうした状況の中で、3世代家族では孫との接触が増えたと半ば歓迎する状況も出ている。

国家がすべてをみる日本を望むのか

 国家が何でも面倒を見ると言えば、まさしくユートピア(理想郷)であり、社会主義国家の理想であり、究極的には共産主義社会の理念でもあろう。

 しかし、共産主義計画経済を採用したソ連が収容所列島と化して70余年で崩壊し、社会主義的市場経済を採用する中国は監視社会で言論弾圧と人権無視が甚だしいことからも、理念の実現が難しいことが一目瞭然である。

 平等の程度からは日本ほどの社会主義的国家はないと言われるほど貧富の差は少ない日本である。それでいて権利ばかりが横溢し、わずかな義務が課されているだけで国防の義務さえない。

 そうした中で、超スピードの少子高齢化で、国家が個人や家族の面倒を見る場面が増えつつある。しかし、それが長く続かないことも明らかである。

 戦後間もなくまでの日本は、子供や老人の面倒は家族が見るのが常態で、家族は地域社会に根付いているのが一般的であった。