マット安川 今回のゲストは、元総務省大臣官房審議官で、阪神・淡路大震災当時の対応を指揮した稲村公望さん。有事の政治のあり方、復興予算や東電への対応、また経済性のみに走りすぎた原発の実態などをお聞きしました。

原発問題の根底にあるのは金儲け第一の市場原理主義

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:稲村公望/前田せいめい撮影稲村 公望(いなむら・こうぼう)氏
中央大学大学院客員教授。鹿児島県徳之島出身の元郵政官僚。総務省大臣官房審議官を経て2003年日本郵政公社発足と同時に常務理事に就任、2005年退任。(撮影:前田せいめい、以下同)

稲村 地震はもちろん天災ですが、福島原発の惨状は明らかに人災です。

 確かに津波の威力は途方もないものでした。公式には高さ十数メートルということになっていますが、映像を見ると実際はもっと高いのではないか。しかし、だからといって「想定外」の一言で片付けるわけにはいきません。

 私は金儲け第一の拝金主義、市場原理主義こそが、根本的な原因だと思っています。もともと40年だった設計寿命が、いつの間にか60年に引き延ばされたというのは、つまりそういうことでしょう。

 減価償却が終わった施設は運転すればするほど儲かります。利益を最大化するという市場原理主義に則るあまり、安全をないがしろにしたわけです。

 そもそも、ひとたび事故が起きれば自然環境がどうなってしまうか分からないのが原発というものです。将来に責任を持てないにもかかわらず、ただコストが安いからと原発を造り、絶対安全だと言い続けてきたのは大きな間違いでした。

 もちろん儲からないことばかりやっているわけにはいきません。しかしこの20年ほどを振り返ると、効率性、収益性ということばかりが偏重されてきたように思います。

 私はあえて利益を度外視することの大切さを、ここに強調したい。郵政民営化に反対した理由もそこにあります。儲からないことをあえてやるから本当の信頼を勝ち得ることができるのであり、それは公的な存在であってこそ可能なのです。