米アマゾン・ドット・コムが、同社の電子書籍リーダー端末「キンドル(Kindle)」に、広告表示機能付きのモデルを追加すると発表した。既に米国で予約を受け付けており、出荷は5月3日を予定している。
電子ペーパー生かし、広告を常時表示
今のところ米国だけを対象にしており、他国での計画については言及していないが、まず同国で広告を導入し、端末価格を従来モデルより25ドル安い114ドルにする。ライバル企業のリーダー端末に対しキンドルの価格競争力を高めるのが狙いだ。
例えば、米書店チェーン最大手バーンズ&ノーブルの「ヌック(NOOK)」は廉価モデルが149ドル、ソニーの「リーダー(Reader)」の廉価モデルは179ドルで販売されており、アマゾンの新製品「キンドル・ウィズ・スペシャルオファーズ」(Kindle with Special Offers)」はそれぞれに対して35ドル、65ドル安くなる。
ただし、新製品といってもハードウエア自体は従来の6インチモデル(無線LAN接続のみに対応する廉価版)と同じだ。
このことから将来は現行モデル、あるいは既にユーザーの手元にあるキンドルも、ソフトウエアをアップデートすることで広告機能が付く可能性があると米欧のメディアは伝えている。
興味深いのは、広告は書籍コンテンツ内ではなく、メニューやスクリーンセーバーに表示されるという点だ。キンドルのスクリーンセーバーは端末をスリープにした時に現れ、今は著名作家の肖像画などを表示している。
キンドルのディスプレイは、画面の表示を切り替えない限り電力を消費しない電子ペーパー。つまり、ユーザーが読書を休止している際、画面は暗くはならず、作家の肖像画が常に表示される。アマゾンはこの画面を広告枠に使うのだ。
アイパッド(iPad)などの液晶画面を備える端末ではこのようなまねはできず、キンドルならではの利点を生かした手法と言える。読者がキンドルを手に取るたびに広告が目に入ることになり、ちょうど雑誌の背表紙のようになる。
広告主はGMやP&Gなど大手がずらり
当初掲載する広告は、米ゼネラル・モーターズ(GM)の乗用車ブランド「ビュイック」や、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のスキンケアブランド「オレイ」、クレジット大手のビザ(VISA)など。
またアマゾンの自社広告も掲載し、キンドル上で同社の製品やサービスなどを割引価格で販売する。
これには、例えば20ドル分のアマゾンギフトカードを10ドルで買える権利や、同社のデジタル音楽販売ストアのアルバムを1ドルで買える権利、同社の衣料品ストアの商品30ドル分を10ドルで買える権利などがある。