都内の物件でもなかなか借り手がつかないご時世に

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

「お客様は外国人」は、もはや観光地だけではない。日本の人口が減少し、空き家が増え続けるなか、都心の賃貸住宅にもその流れが押し寄せている。

 日本に住む外国人の数は年々増えている。留学生、実習生、高度人材など日本で長期滞在する外国人は282万人(2019年6月時点)にのぼる(そのうち東京都の滞在者が58万人)。長期にわたる滞在となれば、当然住むための家が必要だ。

 ちょうど日本には空き家が約849万戸もある(2019年9月、総務省統計局)。空き家は30年前(1988年)の394万戸から倍以上に増えた。賃貸住宅に限っても、空き家は2008年の429万2000戸から5年で432万7000戸(2018年)に増加している。

 賃貸住宅の貸主は、いわゆる「大家さん」と呼ばれる個人オーナーが多い。その中には、昭和、平成、令和の3時代にわたって大家稼業を続けてきた人も少なくない。都内で複数の賃貸物件を管理しているオーナーの佐田和夫さん(仮名、72歳)はこう語る。

「昔は通帳式でね、店子が毎月賃料を持ってきたら、ポンとハンコを押したものでした。ついでにお茶を飲んでいってもらったり、ときには食事に招いたりして。賃借人が金欠のときは『お金があるときでいいよ』なんてね。今はもう銀行振り込みなんで、賃借人と顔を合わせることもありませんが」

 こうした“古き良き昭和のアパート経営”はすっかり様変わりした。大きな変化の1つは外国人の借り手の増加だ。佐田さんが管理するアパートも、外国人からの問い合わせが増えてきた。

 しかし、佐田さんは、外国人に貸すのは積極的にはなれないという。「もしも外国人と日本人が同時に申し込んできたら、当然、日本人を選びます。外国人は言葉のギャップがあるし、賃料の滞納が心配です。近隣とのトラブルだって起きるかもしれませんから」。

古き良き昭和の賃貸経営は過去のものとなった(写真はイメージ)