米ウォールストリート・ジャーナルが4月11日付の記事で、東日本大震災を受けて今、生産拠点を海外に移す動きが出ているが、そうした企業の中には日本企業も多くあると報じている。

 震災の発生から1カ月が経ち、被災した工場や社会インフラといった問題が企業の生産活動を困難なものにしている中、記事は「日本企業の生産体制は、それほど時間をかけずに回復する」としたうえで、「しかし今回の震災は、国の借金が膨らみ、アジアの競合企業は攻勢を強め、人口の減少に歯止めがかからないなど、不安の多い中で起きた」と指摘。

 「阪神・淡路大震災を超える規模の地震と津波に加え、未曽有の原発事故、そして電力不足も懸念されることから、企業には大きな負担がのしかかる」と伝えている。

製造拠点をタイやシンガポールに

 この記事の結論は、日本企業はかねて生産拠点の海外移転を進めていたが、今回の震災でその動きが加速するというものだ。

 例えば半導体生産で世界5位のルネサス エレクトロニクスは、既に8%の生産を外部企業に委託しており、震災前に2013年までにその比率を25%にまで高め、その大半を海外に持っていくという計画を立てていた。

 今、同社はその計画を早めようとしているという。米国の半導体製造企業グローバルファウンドリーズのシンガポール工場で自動車向けマイクロコントローラーを製造することについて協議している。世界の主要自動車メーカーの中で40%のシェアを持つ同社は、顧客が急いで代替部品を探していることに不安を抱いているという。

 また日産自動車は昨年、小型車「マイクラ(マーチ)」をタイなど海外に移転した。2013年には小型クロスオーバーSUV 「ローグ」の生産を米ミシシッピ州カントンに移転する計画だが、同社の幹部は震災後、生産と部品調達の海外移転の規模拡大について示唆したと同紙は伝えている。

日本で生産続ける米ガラス基板大手

 そうした中、液晶ディスプレイ用ガラス基板を手がける米コーニングが日本国内の生産水準を維持すると発表したことが、米メディアに大きく取り上げられた。

 同社はシャープと堺工場(大阪府堺市)の生産設備を一部共用しており、ここで生産したガラス基板をシャープに納めている。しかし震災の影響でテレビ販売が低迷し、物資の供給も滞っていることから、シャープは堺工場と亀山工場の操業を停止している。