米半導体大手のテキサス・インスツルメンツ(TI)は4月4日、同業の米ナショナル セミコンダクターを現金で買収すると発表した。
ナショナル セミコンの発行済み株式を、前日終値に78%を上乗せした25ドルで買い取るとしており、総額は65億ドルになる。TIにとっては2000年に買収した米バー・ブラウン以来の大型買収となる。
既に両社の取締役会では全会一致で承認しており、今後米国と海外の独禁法当局、ナショナル セミコンの株主総会の承認を経て手続きを完了したい考えだ。
TI、東芝を抜き世界3位に
米国の調査会社ガートナーによると2010年の世界半導体売り上げランキングは、米インテル、韓国サムスン電子、東芝、TI、ルネサス エレクトロニクスの順で、TIは4位。
この買収が成立するとTIは東芝を抜いて世界3位の半導体メーカーになる。
TIはスマートフォンなどにも使われるアナログ半導体の最大手。同社によると、2010年におけるアナログ半導体の世界市場は420億ドル規模で、TIの売上高はそのうちの14%に当たる60億ドル。
ナショナル セミコンは同3%の16億ドル。買収後は、TIのアナログ半導体収益は全売上高のほぼ50%になるとしている。
拡大するアナログ半導体市場
アナログ半導体は、例えば温度や光量、振動、磁力といった自然界から得たアナログ信号をデジタルに変換したり、逆にデジタル信号を映像や音声のアナログ信号に変換したりする。カメラや携帯電話のほか、産業や医療分野で使われる電子機器、センサーなどの重要部品にもなっている。
米ニューヨーク・タイムズは、「アナログ半導体は特定用途向けに設計されることが多く、コンピューターチップのような汎用部品と異なり利益率が高い。昨今の機器には様々なセンサーが搭載されるなど、需要が高まっている」と伝えている。