3月19日の記者会見で、枝野幸男官房長官は福島県内で採取された牛乳、茨城県内で採取されたホウレンソウから、食品衛生法上の暫定基準値を超える放射線量が検出されたことを公表した。
国民に広がる基準値不信
ただ、検出された放射性物質濃度の牛乳を1年間摂取し続けた場合の被曝線量はCTスキャン1回程度のものである。またホウレンソウについても、年平均摂取量で1年間摂取したとして、CTスキャン1回分のさらに5分の1程度であり問題ないという。
食品衛生法の基準を超える放射線量が検出されたということは問題であるが、直ちに国民の健康に被害を与えるものではなく問題はないと言うなら、なぜ出荷制限をするのだろう。普通の人が抱く疑問であるが、これに対する十分な説明はない。
政府は基準、基準と言うが、この基準値自体がいい加減ではないかといった「基準値不信」が国民に広がっているようだ。
出荷制限されていない野菜であっても、売れ行きが激減するなど、風評被害が広がっているのがその証左である。基準値不信を増大させる出来事は続く。
4月4日、文部科学省は、福島第一原発から北西約30キロの福島県浪江町の累積放射線量が先月23日から今月3日までで10.34ミリシーベルトに達し、屋内退避の基準となる10ミリシーベルトを超えたと発表した。
後を絶たない風評被害
これに対し内閣府原子力安全委員会は「今のところ屋内退避区域とする必要はない」とする見解を示した。
6日には枝野官房長官は記者会見で「年間1ミリシーベルト」と定めている一般人の被曝限度量の引き上げを検討するよう、原子力安全委員会に指示したことを明らかにした。新聞によると「20ミリシーベルト」を一案として検討しているという。
今回の原発事故に際しては、枝野幸男官房長官が自ら丁寧に情報公開に努めていることは評価したい。にもかかわらず、「政府は隠している」「状況はもっと厳しいはずだ」「政府の発表は信じられない」といった声が後を絶たず、風評被害が続く。
「基準値を超えた」「だが、直ちに健康に被害を及ぼすものではない」といった会見が繰り返され、基準値が現実に合わなくなると基準値自体を引き上げようとする。これでは基準値不信に陥っても不思議ではない。