日本人の「無関心」がアジア全体に危機を招く。これから日本を襲うであろう危機を乗り越えるためには、どう対応していけば良いのか。敗戦後から朝鮮戦争に至る空白の戦後史を、インテリジェンスに関わる歴史研究を踏まえて、評論家の江崎道朗氏が明らかにする。全2回。(JBpress)

※本稿は『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』(江崎道朗著、PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

(前編)朝鮮戦争は「日本攻撃の足場を確保する」準備だった
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/57870

アメリカ・中国・台湾の複雑な関係

 北朝鮮の核開発や、香港での流血デモが国際的に注目されるなか、あまり注目されなかったが、2019年5月27日から31日にかけて、台湾が中国からの侵攻を想定した軍事演習「漢光35号」を実施した。

 旧知の元米軍関係者に尋ねたところ、戦闘機や攻撃ヘリ、地対空ミサイルまで参加させたこの大規模軍事演習に、米軍将校も多数参加したのではという噂が飛び交っているよと教えてくれた。

 なにしろ2017年1月に発足したD・トランプ共和党政権は、歴代アメリカ政府の「親中」政策を全面的に見直し、台湾との関係強化を推進しているのだ。

 アメリカと中国共産党政府(中華人民共和国)、台湾(中華民国)との関係は複雑だ。東西冷戦下、ソ連の脅威に対抗するため、アメリカのR・ニクソン大統領は、中国共産党政府を西側諸国に引き込もうと、1971年に訪中を表明(「ニクソン・ショック」と呼ぶ)。

 そして1979年、アメリカは中国共産党政府を「中国を代表する国家」として承認し、台湾との国交はなくなった。これが現在の中国の台頭へとつながっていく。

 このとき、アメリカは「台湾関係法」を制定、有償で武器などを提供することで台湾との実質的な関係を維持しようとしたものの、国際的には中国を優遇してきた。他の西側諸国も次々に中国と国交を樹立し、台湾は国際的に孤立していく。