米グーグルと米国の作家団体などが合意した書籍デジタル化の和解案について、米ニューヨーク南地区連邦地方裁判所の判事が先週、これを認めないとする判断を下した。このことでグーグルのサービスは今後、大きな問題に直面しそうだと米ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアが報じている。
この問題が取り沙汰されたのは1年前。経緯をざっとおさらいすると次のようになる。
グーグルは、図書館などの協力を得て世界中の書籍をスキャンし、それをもとに書籍の全文検索サービス「グーグル・ブック・サーチ(グーグル・ブック)」を6年間に始めた。
著作権の失効したものは全文閲覧できるようにし、著作権保護期間内のものはその一部を表示し、購入先や所蔵している図書館を案内している。
しかし著作権者の許可を得ないグーグルの行為は問題だとし、全米作家協会(Authors Guild)などが同社を相手取って集団訴訟を起こした。
2008年10月、両者はグーグルが一定の金額を払うことなどを条件に和解した。しかし連邦民事訴訟規則によって集団訴訟の和解は当事者同士だけでは行えず、裁判所の承認が必要。両者は2009年11月に対象となる著作物の “国籍” を英語圏の4カ国に限定した修正和解案を提出し、裁判所の承認を待った。その判断が先週下されたというわけだ。
「和解案はグーグルに極めて有利」
今回の判断で「書籍の電子化や、誰でもアクセスできる電子図書館をつくることは多くの人に恩恵をもたらす」と判事は一定の理解を示したが、「著作権者の許可なくグーグルが多くの利益を得るこの和解案では、同社の立場が極めて有利になり、公正さや妥当性を欠く」と結論付けた。
同時に「著作権者が承認した書籍のみを対象にすることで多くの反対意見は取り除かれる」とし、和解案をさらに修正するよう勧告した。これを受けて作家協会の代表、ポール・アイケン氏は「希望の道は残された」とコメントしたが、グーグルは猛反発している。
というのもグーグルと作家団体が作成した和解案では、グーグルのサービスに参加したくない著作権者が申し出て、自分の作品を公開しないように求める「オプトアウト方式」を取っている。これに対し判事が促したのは、参加したい著作権者がグーグルに申し込む「オプトイン方式」だ。