党大会で当初予想された次期党首に最短距離の「副党首」の新設が見送られた背景にはこうした党内の次期党首を巡る微妙な空気があったといわれている。

 とはいえ、スカルノ一族の「3代目」が次期党首そしてPDIPとしての次期大統領候補レースの本命に名乗りを上げたことには変わりなく、同時にそれはPDIPが「スカルノ一族の政党」であることを内外に改めて示したともいえるだろう。PDIPにはメガワティ党首の実の弟、つまりスカルノ大統領の子供でもあるグル・スカルノプトラ氏も名前を連ねている。芸術家として知られ政治的野心はないとされるグル氏だが、党内ではスカルノ大統領血族の一人として敬意を持たれている。

各党による次期大統領巡る駆け引き

 今後5年間で激しくなることが予想される次期大統領候補に関しては各政党間の調整が焦点となる。与党連合を組む「ゴルカル党」や「ナスデム党」、さらに野党連合から与党に鞍替えを模索している「民主党」「グリンドラ党」などは「次の大統領こそ我が党から」との思いを募らせている。ゴルカル党はスハルト長期独裁政権時代を支えた伝統的政党であり、民主党は第6代のスシロ・バンバン・ユドノヨ大統領の政党である。グリンドラ党は大統領選を戦ったプラボウォ氏の党である。

 こうした各政党の様々な思惑が交錯しながら合従連衡の渦の中での「ポスト・ジョコ・ウィドド」争いだが、その軸となるのはPDIPであり、メガワティ元大統領であることは変わりないとみられている。

 メガワティ元大統領には父親の後光、父親譲りのカリスマ性、血統、そして国軍内部に脈々と生き続けるスカルノ崇拝者の系譜という支持基盤がある。

 国を分断したといわれた大統領選でジョコ・ウィドド大統領と対立位候補のプラボウォ氏による「和解」のための直接会談をメガワティ元大統領の指示により裏で画策したといわれているのが国家情報庁(BIN)のブディ・グナワン長官である。ブディ長官は副大統領、大統領時代のメガワティ党首を副官として支えた警察のエリートで、現在BIN長官としてテロを含めた内外の情報を一手に握り、それを「武器」に政界工作を仕掛けているといわれている。当然メガワティ元大統領の意向を受けてのことだ。

 最近こうしたブディ長官の「陰での活躍」が表に出始めたことで「ブディ長官の次期内閣での入閣」などの観測記事まで出るようになった。ブディ長官がメガワティ元大統領の側近中の側近であるということは、政治経済社会そして治安のあらゆる分野の公然、非公然の情報が元大統領に届き、「武器」となっているということである。