岐阜県のベンチャー企業の代表格、ゼロスポーツ(本社各務原市、中島徳至社長)の自己破産申請が、地元で波紋を広げている。

 「岐阜のベンチャー企業の雄」の突然の破綻。日本郵政グループの郵便事業会社の集配向け電気自動車(EV)1030台の大口受注を獲得し、希望に満ちていたはずの同社が、郵政側の契約解除と違約金通知により、口座が凍結された。金融機関から相次いで返済を迫られたことによる破産で、「ゼロスポーツがダメなら、もう岐阜でベンチャーは育たない」と悲観論が支配する。

 同社のメーンバンク、十六銀行の堀江博海頭取は「十六銀行としてやむをえない経営判断だった」とするが、「はしごをかけて屋根に上らせ、いきなりはしごをはずしたように映る」(各務原市の会社社長)と、不安を募らせる結果になっている。

 真相が見えにくい中で至った今回の事態だが、各務原市の財界では「裏(の問題)があろうとなかろうと、潰すべきではなかった」との声が上がる。ゼロスポーツの破産申請は、地元と地元ベンチャーにどんな影を落としたのか。

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 各務原商工会議所に衝撃が走ったのは、同社が自己破産申請すると発表した3月1日。「事業を停止した日に事態を始めて知った。

 中島社長は会議所の事業企画委員長で、来年度事業にも意欲的に提案いただいていたのに」─―。会議所活動に熱心で、同会議所会頭の星野鉄夫岐阜車体工業会長を慕っていた中島社長。日ごろからその姿を目にしていた会議所関係者のショックは大きかった。

 ある経営指導員は「結果的に何もできなかったとしても、自己破産の前に出来たことがあったのではないか」と悔しさをにじませる。ある職員のメールには、報道を見た企業から「(資金繰りなど)苦しかったのなら支えることができたのに」というメールが届いたという。

 同商工会議所の和田雅仁専務理事付参事は、地域で育成する航空機産業を例に挙げ「ボーイングは、次世代ジェット旅客機B787の納入を何度も延期している。損害ならANAも多大。ゼロスポーツはたった一度の納期の延期で、なぜ7億円もの違約金を求められるのか」といぶかしむ。