はじめに

福島第1原発、全1~6号機で受電準備整う

津波で宮城県石巻市の市街地にまで流された漁船(3月15日)〔AFPBB News

 世界に誇る経済力と発展に陰りが見えて十数年経った日本に、2011年3月11日、有史来最大と言われる大地震が発生し、被災地域はもとより日本国内、さらには世界経済まで影響を及ぼしている。

 とりわけ懸念されるのが福島第一原発の放射能漏れ事故の対応ぶりだ。

 危機管理の原点は「最大脅威にまず備えよ」だと私は考えるが、被害極限に気を奪われ、最悪の事態への備えが疎かになっているのではないかと多くの国民が不安を感じている。

1 未曾有の危機的状況にも、どこかに最良の答えがある

 この放射能漏れ事故が生起した時、すぐに米国側が対処協力を申し出たというが、日本側はこれを断ったという。

 とりわけ原発事故・放射能漏れという高度の専門的な知識や技術が要求される国家の命運をも左右する事故については、お金をかけてでも世界の英知を集めて迅速に最良の対処策を講じるべきだと考える。

 しかし、民心安定に気を奪われ、非専門家が無暗に介入し、その結果、後手後手の対応になっているようで、いつ大パニックが起きるか心配だ。

 規模も様相も場面も全く異なるが、原則は同じだと思う私が、被災の現場指揮官として阪神・淡路大震災の現場で学んだ危機管理・事態対処の要諦は以下の通りである。

 予測しなかった事態の生起、情報が少ない、甚大な被害、放置すれば被害が拡大、保有する人員・装備・システムでは対処困難、指揮連絡も制約、こうした状況には今と原則的には共通するものが多い。

 原発放射能漏れ対処にも「どこかに最良の答えがあるはず」であり、「最適の人材で当たらせる」ことが条件であり、「最良を追求する」ことで事態終息の糸口がつかめよう。

 戦う装備を十分に与えられていなかった我が部隊は、知見も装備もそして隊員も借りて101日間戦い抜き、難局を乗り切った。