対話掲げつつ「敵対的行為に躍起」、北朝鮮国連代表部が米国批判

朝鮮半島の南北軍事境界線上にある板門店で、握手するトランプ米大統領(右)と金正恩朝鮮労働党委員長。北朝鮮の国営朝鮮中央通信配信(2019年6月30日撮影、同年7月1日配信)。(c)AFP PHOTO/KCNA VIA KNS〔AFPBB News

(赤石晋一郎:ジャーナリスト)

 ドナルド・トランプ米大統領は6月30日、南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と約50分間会談した。

 トランプ氏によるツイッターでの呼びかけから幕を開けた劇場型外交ショーは、現職の米大統領として初めて北朝鮮側に越境するなど異例ずくめの展開となった。

 なぜ、緊急米朝会談が実現したのか。その内幕と、米朝二国のそれぞれの思惑について検証していきたい。

「体制崩壊」の悪夢に怯える金正恩の焦り

「今回、米朝会談が実現したことで、いちばんホッとしているのは金正恩朝鮮労働党委員長だったはずです。北朝鮮はそれだけ追い詰められた状況にあったのです」(北朝鮮ウォッチャー)

 2017年に決議された(対北朝鮮制裁に関する)国連安保理決議案は、北朝鮮経済に深刻なダメージを与えた。経済制裁により北朝鮮の命綱である中国向け輸出は昨年、前年比で87%も減少しており、「北朝鮮の国内経済は破綻寸前になっていると言われている」(同前)という。

 経済危機はその指導体制基盤も揺るがしている。守旧派とされてきた朝鮮人民軍幹部たちが力を取り戻すなど、その国内パワーバランスが変化し始めているとされているのだ。

 金正恩を悩ませているのは内政だけではない。脱北者団体である「自由朝鮮」の予測不能な活動も頭痛の種となっている。