米インテルに次ぐ米国第2位の半導体メーカー、テキサス・インスツルメンツが14日、日本にある3つの工場のうち2つが東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)の影響を受けたと発表した。
全生産量の1割担う工場が「相当な被害」
福島県の会津工場と茨城県の美浦工場が損傷を受けており、前者への影響は比較的軽微だが、同社によると後者の美浦工場は「相当な被害」。この工場は売上高ベースで同社の全生産量の1割を担っており重要な生産拠点だ。
また同社はインテル、韓国サムスン電子、東芝に次ぐ世界第4位の半導体メーカーであることからその影響は大きく、今後半導体価格の高騰が予想されると米ブルームバーグなどが伝えている。
美浦工場で損傷を受けたのは化学薬品、ガス、水、空調を供給するインフラ設備で、その復旧には約3週間かかる見込み。また漏水が発生したことで製造装置の一部が被害に遭い、再稼働の時期は現時点では分からない。
対策としては現在、大分の日出工場や、米テキサス州ダラスの本社、マレーシア工場から応援が駆けつけ復旧作業にあたっている。今後は、5月から一部のラインで段階的に生産を再開し、工場の全面再稼働は7月中旬を予定している。そして、これを前提にした出荷の再開は9月になるとしているのだが、あくまでも電力が継続的に供給されることが条件ということだ。
会津工場の方も製造装置が既に再稼働しているというが、こちらも電力の安定供給が確保されることを条件に全面稼働は4月中旬になるとしている。
工場は「計画停電」の対象地域
ここで重要なのは、半導体の製造装置には安定した電力が不可欠ということ。美浦工場のある地域は東京電力の「計画停電」の対象にもなっており、現時点では安定供給は不透明という状況だ。
こうしたことから同社は生産体制をほかの工場に移す作業も進めており、現時点で美浦工場が生産するウエハーの6割を生産できる代替工場を特定できたとしている。
今後さらにこの割合を引き上げるというのだが、そのためのコストもかかり、同社は、今年1~3月期と4~6月期の決算でその費用を計上するつもりだ。
また売り上げも減ることが予想され、その度合いは生産移転の進展具合や、在庫量、顧客需要といった要素によって異なるとしている。
なお米フリースケール・セミコンダクタの仙台にある製造拠点、東北セミコンダクタも操業を停止している。同社では地震発生後に社員全員が工場から避難しており、現在は災害対策本部が工場の調査を行っている段階。
しかし現地の通信、電気、交通が途絶えているため、まだ影響を十分に調査できていないとブルームバーグは伝えている。
日本は世界における重要な半導体製造拠点。今回の震災は、国内メーカーだけでなく、日本に拠点を構える海外メーカーにも深刻な影響を及ぼしている。