1 前 言

空自のイラク空輸活動に違憲判断、政府は派遣継続の構え

航空自衛隊のC-130輸送機〔AFPBB News

 新防衛大綱では「動的防衛力」の概念を打ち出したが、「動的防衛力構想」の要は戦力の集中にあることは異論のないところだろう。そして、戦力の集中は兵站能力、特に戦略輸送能力に大きく依存することもまた、論を俟たない。

 米軍統合教範の巻頭には、A.C.P.ウェイヴェル将軍の次の言葉が書かれている。

 「戦争を経験するほどに、すべてが管理や輸送に依存していることを実感する・・・。わずかな技能や想像力があれば、自分の軍隊をいつどこに置きたいかを知ることができる。しかし、多くの知識と困難な仕事なくしては、自分の部隊をどこに置くことができ、そこに部隊を維持できるか否かを知ることはできない」

 「The more I see of war, the more I realize how it all depends on administration and transportation…. It takes little skill or imagination to see where you would like your army to be and when ; it takes much more knowledge and hard work to know where you can place your forces and whether you can maintain them there.」

 まさに、「戦争は作戦(必要性)が主導し、兵站(可能性)が作戦を規制する」のである。

 そして、ヘンリー・H・シェルトン米統合参謀本部議長(Doctrine for Logistic Support,6.4.2000)は次のように述べている。

 「ロジスティクスが補給ベースのシステムから輸送ベースのシステムに移行するのに従い、応答性と視認性とロジスティクス資源へのアクセスを強化するため、開発中の新しい技術に投資することは極めて重要なことである」

 このように、兵站の焦点は補給ベースから輸送ベースへと移行しており、この傾向は、自衛隊の兵站体制が着上陸侵攻対応の野戦兵站体制から低強度紛争対応の基地兵站体制へ変化することによりますます強くなるだろう。

 「動的防衛力構想」は兵站体制、特に戦略輸送体制の整備なくしては成り立たないのである。

 本稿は、着上陸侵攻対処から低強度紛争対処へ、基盤的防衛力構想から動的防衛力構想へ変化する自衛隊における、あるべき戦略輸送体制についての私見である。