アイルランド共和国下院総選挙で長年政権を担ってきたフィアナ・フォイル(共和党)が歴史的大敗を喫した。「ケルトの虎」と呼ばれもてはやされてきた経済「ブーム」から一転、デフォルトの瀬戸際にまで追い込まれた経済危機への失政の責任を負わされた形だ。

1990年代半ばから驚異の経済成長

アイルランド総選挙、与党大敗で政権交代へ

2月25日の総選挙で勝利した最大野党・統一アイルランド党(Fine Gael)のエンダ・ケニー党首〔AFPBB News

 1990年代半ばから驚異の経済成長を遂げ、首都ダブリンも今では高層ビルが目立つ街となっているが、「ケルト」という言葉から思い描くイメージは、やはりかつての牧歌的な風景と「ゆるい」時間の流れであろう。

 それは、時を同じくして「ブーム」となった「癒やし」のケルト音楽から受ける影響もあるのかもしれない。

 2006年のトリノ冬期オリンピック、フィギュアスケートで日本中を沸かせた荒川静香選手の金メダル獲得。

 競技後のエキシビションの際使われた「you raise me up」もそんなケルト音楽で人気の女性5人組ケルティック・ウーマン(Celtic Woman)による「癒やし」の曲だった。

 その後日本でもヒットしたが、米国音楽業界誌ビルボードの「ワールドミュージックチャート」では、何と81週間1位を記録するという驚異的なロングセラーとなったデビューアルバムに収められた曲だった。

米国で根強い人気のケルト音楽

 米国でのケルト音楽人気は根強いのである。

 「ゆるい」旋律が続くこのアルバムには、「ハリーズ・ゲームのテーマ」という曲も入っているが、実はこれ、その曲調とは裏腹に、泥沼の北アイルランド紛争を描いたテレビミニシリーズのテーマ曲。

 1982年にケルト音楽の人気バンド、クラナドが発表し英国で大ヒットを記録した曲のカバーなのだ。アイルランド語(ゲール語)で歌われたそのオリジナル曲は映画『パトリオット・ゲーム』(1992)にも挿入されていた。

 この映画、実際に父親がアイルランド系米国人であるハリソン・フォードが扮した元CIA分析官が、こちらは実際にアイルランド人のリチャード・ハリス扮するIRA幹部と対決する話である。