イスラエル総選挙、右派勢力が勝利確実 ネタニヤフ氏続投へ

イスラエル・テルアビブで支持者にあいさつするベンヤミン・ネタニヤフ首相(2019年4月10日撮影)。(c)Thomas COEX / AFP〔AFPBB New

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 筆者は今年3月、ビジネス関係のカンファレンスに出席するためにイスラエルを訪問し、様々な分野の関係者たちと話をする機会があった。その流れで、イスラエルが誇る世界に名の知れた諜報機関「モサド(イスラエル諜報特務庁)」の元長官にも、話を聞くことができた。この人物は35年以上にわたってモサドで働き、世界を裏側から見てきた元スパイである。

 モサドの長官にまで上り詰めたこの人物の目には、現在のサイバー空間はどう見えているのだろうか。

 彼の話に触れる前に、まず世界有数のサイバー大国と言われるイスラエルが、どのようにサイバーセキュリティを発展させてきたのかを簡単に振り返りたい。

サイバーセキュリティの父、ベンイスラエル少将

 イスラエルがコンピューター関連の事業に力を入れ始めたのは、1970年代より以前のことだった。というのも、70年代には、すでに有能な科学者がこの国で大勢育っており、当時、世界的な大手IT企業の「IBM」や「インテル」などが人材確保の観点から、イスラエルに研究施設を設置していたからだ。

 イスラエルに「国家サイバー局」を立ち上げた「イスラエルのサイバーセキュリティの父」と呼ばれるアイザック・ベンイスラエル少将は以前、筆者の取材に、「1980年代の終わりまでに、私たちはコンピューターが戦闘におけるテクノロジーを支配することになると認識していました」と語っている。つまり、その頃には、現在のようなサイバー空間の混沌とした様子を感じ取っていたという。

 さらに、「そこで、私たちは兵器製造を始め、コンピューターを戦闘などに使っていたのです。90年代初めにはすでに、イスラエル軍の中でサイバー兵器を作るチームも存在していた」とも語った。

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