平成21(2009)年の総選挙で民主党は「生活が第一」のキャッチフレーズの下、国民受けするマニフェストを掲げて勝利した。「日本」の存在感が低下の様相を見せ、一方で年金に対する不安が高まっていた時期であり、大きな期待を担っての政権移行であった。

 中でも日本を蘇らせる印象を与えた「政治主導」や「国家戦略室」が注目された。しかし、「予算」の無駄削減という名目で行われた「事業仕分け」に見たようにパフォーマンス先行で、国家戦略と言うにはほど遠く、逆に戦略のなさを暴露した。

 果たせるかな、1年半後の今日、政治主導は有耶無耶になり、国家戦略室も期待に沿う機能を果たしていない。

 こうした政治の迷走(長く政権を担当してきた自民党に大いに責任がある)は、悉皆(しっかい)「国家の大本(たいほん)」を忘れているからにほかならない。

三島の「檄」文を再読する

三島由紀夫没後40周年、都内で「憂国忌」営まれる

2010年11月、三島由紀夫没後40周年を記念して都内で「憂国己」が営まれた〔AFPBB News

 昨年(2010年)11月25日は三島由紀夫が自裁して40回目であった。改めて「檄」文を読み直して、はっとすることも多かった。

 三島は戦後の日本を「経済的繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本を正さずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んでゆく」(引用は原文のまま、以下同)姿として捉えていた。

 また「政治は矛盾の糊塗、自己の保身、権力欲、偽善にのみ捧げられ、国家百年の大計は外国に委ね、敗戦の汚辱は払拭されずにただごまかされ、日本人自ら日本の歴史と伝統を潰してゆくのを歯噛みしながら見ていなければならなかった」と総括する。

 そうした見方は自衛隊に体験入隊し、そこで受けた教育・訓練に「真の日本」を見出していよいよ確信するようになった。

 そこで、「国のねじ曲がった大本を正すといふ使命のため」挺身しようと決意、少数精鋭の有志を募って同様に自衛隊を体験させる。

 しかし、その後の政治情勢から自分たちが目指した反革命は夢と消え、今日の状況をもたらした最大の敵は「現憲法」であると見定める。