(舛添要一:国際政治学者)
3月19日、JOC(日本オリンピック委員会)理事会で、竹田恒和会長は6月の任期いっぱいで退任することを表明した。同時にIOC(国際オリンピック委員会)委員も退任する。2020東京五輪誘致に関して、贈賄容疑でフランス司法当局の捜査対象となったことが原因である。
IOCは、東京大会のイメージ悪化を避けるために、竹田会長に退任を迫ったようである。IOCのトーマス・バッハ会長は、7月24日に東京で開かれる開催1年前イベントへの出席を断ったという。「竹田氏と隣り合わせに並ぶのを拒否」とフランスのルモンド紙(3月19日付け)は報じている。
この竹田退任劇の背景には、JOCやIOCのあり方、そしてオリンピックそのものの意義、スポーツと政治の関係など、多くの論点がある。誘致には関わっていないが、私は都知事として、オリンピック・パラリンピック2020年東京大会の準備に奔走してきた。その経験も踏まえて、以下に率直に記してみたいと思う。
フランスの国会議員は予審判事の捜査対象になっただけで辞任
私は、都知事時代には、IOCや国や組織委員会との調整、膨れ上がった経費の削減、新国立競技場建設プランの見直しなど、多数の関係者の合意を得るのに苦労したものである。
それは都政全体の半分くらいの重みを持っており、利害関係者の政治的、経済的介入もあり、日々、厳しい対応に追われていた。大会には約3兆円の経費がかかり、経済効果は約30兆円と見積もられているが、国家的行事として国や都が成功を担保しているだけに、利権を追求する者たちにとっては絶好の機会でもあるのだ。
2020五輪東京大会の招致委員会の会長は竹田氏だったが、同委員会は、シンガポールのコンサルタント会社「ブラック・タイディングズ(BT)」に計180万ユーロ(約2億3000万円)を支払っている。BT社の代表はタン・トンハン氏である。彼は、国際陸上競技連盟(IAAF)前会長でセネガル人のラミン・ディアク氏の息子、パパマッサタ・ディアク氏と関係が深く、そのためコンサル料は、ディアク親子への工作依頼のための賄賂だったのではないかと疑われている。