アメリカ海軍などが“第3の海軍”と呼ぶ海上民兵たちは、南シナ海での中国の主権を守る“任務”に従事することが、自らの漁業権益を確保することに直結するため、積極的に任務を遂行することになるのだ。

 そして海上民兵の漁船群の周辺には、“第2の海軍”である中国海警局の各種巡視船が「安全操業の確保と違法操業の監視」に当たっている。それらの周辺は、“第1の海軍”である中国海軍艦艇が警戒監視に当たっている。

 それだけではない。西沙諸島のウッディー島(永興島)、南沙諸島のファイアリークロス礁(永暑礁)、スービ礁(渚碧礁)、ミスチーフ礁(美済礁)には航空基地が設置されているため、海南島や中国本土から飛来する中国海軍機は心置きなく南シナ海の警戒監視活動を実施できるような状況になっている。

ディスカバリー礁(華光礁)とウッディー島(永興島)の位置
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 このように、南シナ海における中国の圧倒的な軍事的優勢がほぼ確立している。そのため、西沙諸島や南沙諸島で“毎週のように繰り返されている”衝突事故は、報道されないどころか報告すらされない状態になりつつあるとのことである。

 なぜならば、ベトナム当局が中国側に強く抗議すると、さらに衝突事故が頻発する結果となってしまうからだ。政府間の対応は八方塞がり状態に陥っているというわけだ。

静観するしかないベトナム当局

 実際にベトナム漁船と衝突事故を起こすのは中国公船ではなく民間の漁船である。その漁船が海上民兵によって操船されていても、偽装漁船でも軍艦でも公船でもなく、あくまでも漁船である。したがって、ベトナム当局が中国側に抗議しても、漁船同士の衝突に関して中国政府には責任はないと言われればそれまでだ。

 おまけに強行に抗議するとさらに衝突事故が起きてしまうため、ベトナム側としては衝突事故を表沙汰にして騒ぎ立てても無意味どころか逆効果である。結果的に静観するしかなくなってしまっているのだ。