日本能率協会では、「潜在能力の組織的発揮」の研究を行い、産業界への提言発表を続けています。それは、日本企業が人と組織の面において重大な課題に直面していると考えたからです。
これまでの延長線上では通用しない時代に
日本経済は回復基調にあるとはいえ、現在、日本産業界は、大変な苦境の中にあります。
このことは行き過ぎた金融資本主義の暴走に起因するものであるにしても、好むと好まざるとにかかわらず、これまでの企業経営の成功体験だけでは通用しない時代になってきていることを認識せざるを得ません。
同時に、日本企業が真の復活を遂げるためには、これまでの日本企業の強さが何であったのかの確認が必要です。
戦後の高度経済成長は、卓越したリーダーシップを発揮した創業者や、勤勉で真摯に取り組む人材の厚みによるところの高い技術力と強い現場力によって、その実現を果たしました。
またその後の公害問題やオイルショック、1980年代の円高不況、1990年代のバブル崩壊後の不況を乗り越えてきました。まさに「企業は人なり」の実践が、日本企業の強さの原点であったと考えます。
仕事のやりがいが右肩下がりに
しかしながら、現在の企業経営においては、日本企業の強さの源泉にあった、「人を大切にしている」と言い切れるのでしょうか。
平成20(2008)年度労働経済白書によると、「仕事のやりがい」など、仕事への満足感が長期にわたり右肩下がりになっています。
その理由としては、「仕事に見合った賃金が得られない」「仕事を通じて成長できない」「個性を発揮できない」「社会に役立っているとの実感が持てない」が多く回答されています。
仕事への手応えが乏しく、また、認めてもらっていないとの内なる声が職場に少なからずあることがうかがえます。