日下慶太氏。閉店後の大阪・新世界商店街にて

 大阪の新世界市場を皮切りに文の里商店街、伊丹西台、宮城県女川など全国へ広がっていった「商店街ポスター展」。その仕掛け人が電通のクリエイター、日下慶太氏だ。数々の広告賞を受賞し、地域振興を核とした独自のクリエイティブ活動を続ける日下氏に、若手クリエイターへのアドバイスを綴ってもらった。(JBpress)

20年の広告稼業で学んだこと

 何か若いクリエイターに向けてアドバイスをしてほしいという執筆依頼が夏頃に入った。なんだかダラダラとしてしまってようやく冬に書き上げた。

迷子のコピーライター』(日下慶太著、イースト・プレス)

 数カ月考えに考え抜いて、私が若手クリエイターにいちばん伝えたいこと。それは拙著『迷子のコピーライター』(イースト・プレス)を買って読んでほしいということだ。そうすると、私に印税が入る。豊かな生活ができる。ベストセラーともなると、作家になることができるかもしれない。見積り、スケジュール管理、打ち合わせなど日頃の雑務から解放されて、どこか山中の館に篭り、パイプを燻らせながら、机に向かい執筆にいそしむことができる。というわけで、ぜひ買ってほしいのである。オールカラーで336ページで税込1782円、これはお得だ。消費税が上がる前にぜひ。

 いや、それは、あまりに下世話だった。下品だった。申し訳ない。せっかくここまでたどり着いてくれたのだから、私が20年間ほどの広告稼業で学んだそのエッセンスをみなさんにお伝えする。そして、技術的なことよりもその底にある精神的な何かを伝える場としたい。

(1)誰もあなたに興味はない

 CMが始まればトイレに行く。郵便ポストのチラシはゴミ箱直行。YouTubeの広告スキップのアイコンが出た時、ほっとするのはどうしてだ。そう、広告は邪魔者なのだ。