8年目のシーズンを迎える栗山英樹監督。書き続けた分厚いノートは10冊を超えた。(写真・高須力)

 いよいよ12球団のキャンプが始まり、球春到来の声が聞かれ始めた。前例のない補強を敢行し、優勝候補の一角と目される北海道日本ハムファイターズはどのような戦いを見せるのか。

 今回は、そのマネジメントに注目が集まる指揮官・栗山英樹の思いを、キャンプイン直前に行われた自著イベントの言葉などから紐解いていく。

タイトルにまでした「稚心を去る」に込めた思い

 唯一アメリカでキャンプを張る北海道日本ハムファイターズの指揮官・栗山英樹は1月24日、自著(『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』)の出版イベントを終えるとそのまま、最終便で東京へ向かい、北海道へ戻ることなく「戦いの準備の地」へと旅立った。ここから約1カ月、地元に戻ることなく、来るシーズンに備える。

 一時の別れとなる「ホーム」のイベントで栗山監督は、新シーズンへのプランや、7年間の振り返りなどさまざまなテーマについて語ったが、もっとも力が入ったのは、新刊のタイトル『稚心を去る』に込めた思いだった。それは、ひとえに8年目のシーズンの指針を示したものとも言える。

 そもそも「稚心(ちしん)を去る」とは、幕末の志士・橋本左内が『啓発録』で記した一文に由来する。栗山監督は、本書の中でこう説明している。

「いまも読み継がれる『啓発録』は、彼(編集部注:橋本左内)がこれから生きていく上での指針、強い決意のようなものをしたためたものだ。時代が違うとはいえ、これが、いまでいう中学生が打ち立てた「志」かと思うと、心から感服する(編集部注:啓発録は橋本左内が15歳のときに書いたと言われる)。そしてこの『稚心を去る』が、人の能力を引き出すためにはとても重要な意味を持ってくると、最近、強く感じている」(『稚心を去る』より引用)

 イベントでは、本書のタイトルをつけた理由を含めこう語った。

「選手のなかには子供っぽさからくる、わがままにも見えるものが、――これは僕も含めてですけど、人間であればどこかにあって。そういったものを含めてチームが勝つためにどうしたらいいのか、ということを考えたときに、何とか早く子供っぽさを消して、大人にしてあげなきゃいけないと思うことがすごくあった。なにかそのために手伝ってあげることはないか、と。橋本左内は、幼心を去らねば人間大きなことはできない、と最初に言ってるんですけど、そんな言葉がすごく頭にあったので、このタイトルをお願いしました」

 指揮官として現役最長の8年目を迎え、その間、二度のパ・リーグ制覇、一度の日本一、五度のクライマックス・シリーズ進出。それだけでなく、最下位も経験した。

 さまざまなチームの姿を見てきたなかで、もっとも大事だと今、思うことが「チームが勝つためには、稚心を去らねばならない」だった。

 ではその「稚心」「幼心」というのはどういったものなのか。「野球少年」の心を持ち続けているように見えるスーパースター・大谷翔平との対比で、それを問われると、栗山監督は「それはまったく別ものだ」と指摘した。