写真・高須力

 北海道日本ハムファイターズの補強は大きな注目を集めた。ドラフト1位の金足農・吉田輝星や甲子園優勝投手、大阪桐蔭の柿木蓮、最多勝を2度獲得した120勝右腕・金子弌大、侍ジャパンの経験もある秋吉亮・・・。

 ひと際、異色だったのが台湾野球界のスター・王柏融の獲得だった。25歳とまだ若い王は、どのような足跡を日本野球界に残すのか。

 そして、エンゼルス・大谷翔平や清宮幸太郎ら若い選手の育成に定評のある北海道日本ハムファイターズと栗山英樹監督のもとで、どのような成長を遂げるのか――。

 1月24日に発売される栗山英樹の新刊、『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』には王柏融に出会い、感じた思いが率直に綴られる。「大谷翔平」とだぶっだその思いとは? 本稿では、『稚心を去る』より、一流の人が持つ資質について紹介する。

文句なしに欲しかった選手・王柏融

 台湾球界で2年連続打率4割、三冠王も獲得した「大王」こと王柏融がチームの一員となってくれた。
 
 2018年のオープン戦の時期、北海道移転15周年プロジェクトの一環で、彼が所属するラミゴ・モンキーズを招いて、札幌ドームで国際交流試合を行った。清宮幸太郎が、実戦の舞台でようやくプロ初ヒットを放ったのがその試合だった。

 もちろんそのときから王柏融には注目していたし、近い将来、獲得に動くかもしれないということも想定していた。いまのファイターズは、比較的、外野にコマが揃っているが、それでも文句なしに「欲しい」と思わせる外野手だった。
 
 その交流試合の際、暖かい台湾で生まれ育った彼が、雪国である北海道で、しかもまだ雪が積もっている季節に野球の試合をするということを、どのように感じるのか。そして、この北海道という土地において、ファイターズという球団がどういう存在なのか、それらを肌で感じてもらえたことは大きかった。そして何よりも、スタッフが誠意を尽くしてゲスト球団をもてなそうとする姿勢がとても嬉しく、誇らしく思えた。
 
 ポスティング制度を利用した入札となり、正直、単純な金額勝負になったら分が悪いだろうと覚悟していた。だから、きっと彼はお金以外のことも加味して、交渉相手にうちを選んでくれたのだと思う。やはり人の心を動かすのは「誠」なのだと、ここでも大いに納得させられた。
 
 そして、台湾で行われた入団会見では彼の人柄に触れ、王柏融という選手が台湾野球界にとってどういう存在なのかを肌で感じることができた。