前回、「システムイニシアティブ」についての話をした。システム開発はユーザー企業と開発側(ベンダーやシステム開発会社など)との「共同作業」であり、本来はユーザー側がイニシアティブを取るべきだという点を強調した。
「共同作業」が行われず、ユーザー側がイニシアティブを取らなかった場合、システム開発はどうなるのか? 過去にあった事例で説明しよう。
ある会社(A社)が経営危機に陥った。A社の再建に当たることになった会社から、当社に依頼があった。
A社には自社で構築した汎用機のシステムがあった。だが、業務縮小に伴いシステムも縮小することになった。ついては汎用機から小規模サーバーにシステムを移し替えてほしいという依頼だった。
当社は受注するに当たって、以下の条件を受け入れてもらうことにした。
(1)まずは必要最小限の帳票機能の実現を目指す。要件定義後に、必要があれば追加設計と別見積もりを行う。
(2)従来の汎用機システムの機能をパッケージソフトに移し替える。その際、すべての機能を移植することはできない。場合によっては、パッケージソフトの機能に合わせて業務内容の変更が発生することもあり得る。
(3)ユーザー側にシステム開発要員を確保してもらう(専属の社員をプロジェクトに入れてもらう)。
社内の人間がまったく関与しないプロジェクトに
システム移行プロジェクトは、スタート時は順調に見えたが、途中から次のような出来事が次々に起きた。