シャープの戴正呉社長。写真は2016年11月の決算発表会見時のもの(写真:つのだよしお/アフロ)

 2018年12月21日、日経電子版が「イブニングスクープ」として、「鴻海・シャープ、中国政府と半導体工場 総額1兆円規模」との見出しで、鴻海・シャープ連合の巨額設備投資計画をすっぱ抜いた。

 鴻海とシャープは、中国に最新鋭の半導体工場を新設する方向で地元政府と最終調整に入ったというのだ。総事業費は1兆円規模で、広東省の珠海市政府との共同事業である。鴻海グループで唯一、半導体生産を手掛けるシャープの技術がこの工場で活用されるという。

 鴻海とシャープによる巨額の設備投資はこれだけではない。液晶事業についても、中国と米国に各々1兆円を超える資金を投じて新工場建設を進めているのだ。

鴻海・シャープの相次ぐ大型投資計画

 2017年3月に、鴻海は、中国・広州市で新設する液晶パネル工場の起工式を行っている。この工場は、シャープ堺工場の10世代を超える「10.5世代」と呼ばれる世界最大級の液晶パネル工場で、2019年には量産に入る計画である。フルハイビジョンの16倍の解像度を持つ「8K」の生産体制を築き、世界をリードする狙いだ。

 さらに鴻海は、トランプ大統領の「アメリカ第一」主義に呼応して、米国ウィスコンシン州にも液晶パネル工場を建設する。2018年6月に、トランプ大統領を招いて起工式を行っている。総額1.1兆円を投資する計画で、1万3000人の雇用を生み出すとしている。

 総額3兆円を超えるこの米中投資計画。まずは中国・広州市に造る「10.5世代」液晶パネル工場を成功させることが、その後の投資の成否を占う試金石となるだろう。

 この設備投資計画からも分かるように、シャープと言えばやっぱり事業の軸は「液晶」なのだ。

 だがシャープは、最近は大規模展示会や見本市のような場で、液晶戦略を広報することは少なかった。経営危機と鴻海傘下入りという経営環境の激変のため、講演会等の表舞台に立つことがなかったためだ。私のような技術経営を研究する者にとっては、CESやCEATECといった国際展示会は、各社の開発動向や新製品情報、さらには開発・販売戦略を知る大切な機会となっている。そのため、国内外を含め、なるべく足を運ぶようにしている。その私が、最後にシャープ経営陣の講演を聞いたのは、2015年10月に幕張メッセで開催されたCEATEC JAPAN 2015での水嶋繁光副社長(当時)の講演が最後ではないだろうか。