意外な層が、「自国第一」意識を強めている?

 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。 

 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。

日本でも進んでいる「自国第一」意識

「米国は国家の利害を常に優先して行動する」(トランプ大統領)
「(国連を指して)選挙を経ず責任も負わないグローバル官僚機構に、わが国の主権を明け渡すことはない」(同上)
「米国は世界各国の『財布』のように認識されているが、そのような現状を終わらせなければならない」(同上)
「米国が米国第一なら、ドイツはドイツ第一だ」(ドイツ政党「AfD」ガウラント党首)
「イタリア国民が第一だ。イタリアはばかげた規則にこれ以上従わない」(イタリア政党「同盟」サルビーニ党首)
 

・・・上記は、最近発言された、アメリカなど世界各国政治指導者たちの発言。
近年、世界の政治動向のニュースを見ると、「自国第一」「内向き化」に向かう動きを報じるものが、非常に多くなっていると感じます。

 自国の利益を優先する政策を掲げるポピュリズム政党の政権奪取。
 国政選挙での「反移民・難民」を掲げる右派勢力の躍進。
 自国有利、保護主義的な貿易枠組みの再構築と相手国への制裁。
 国際協調的な環境保護ルールからの離脱・・・。

 さまざまな領域で動きが起きていますが、これらの根底にあるのは、「国際協調や世界全体の利益よりも、自国の利益を優先すべきだ」という考え方。

 これが人びとの支持を集め、政治の勢力図を変え、実際の動きとして世界各地で表出し、ひとつの潮流を形成しています。