この原稿を今、カリフォルニア州の田舎のホテルで書いている。2月の上旬から、2回目の「反スラップ(SLAPP)法」を巡るアメリカ取材の旅に来ているのだ(スラップとは、市民の公的発言を妨害する口封じ裁判のこと:Strategic Lawsuit Against Public Participation)。

 ちょうど1年前、アメリカ各地の反スラップ法の専門家たち(弁護士、NPO、学者、ロビイストなど)を取材して回った。帰国してからさらに、日本でのスラップ訴訟を取材する旅を続け、当事者や弁護士とディスカッションを重ねていくうちに、前回の取材では詰め切れなかった点に、はっきり答えを出したくなった。

 最初は反スラップ法について補完的な取材だけを予定していたのだが、前回のアメリカ取材で助けてくれた人たちが「言論の自由に関する問題でニューヨークに行くなら、誰それに会うといいよ」とか紹介状メールまで書いてくれた。

 勧められるままに毎日インタビューを続けているうちに、テーマが「スラップ」から「言論の自由」「名誉毀損」「民事訴訟」などなど、どんどん広がって、これがまた面白い。毎日毎日、興奮することばかりで、楽しい。

反スラップ法、ジャーナリズム・・・、自腹取材でも苦にならない

 記者が「今、何を取材しているのか」を明らかにするのは禁物なので、簡単に途中経過をご報告。

(1)ニューヨーク州の反スラップ法とそのほかの言論保護法、判例の取材。

(2)アメリカの名誉毀損訴訟でいかに言論側が手厚く保護されているか法律や判例の取材。

(3)「名誉棄損ツーリズム(Libel tourism)」(もしくは「名誉棄損名所巡り」。自分にとって有利な判決が見込める国を探して名誉棄損で訴えること)と戦ったテロ研究者、レイチェル・アレンフェルドさんのインタビュー。こうした嫌がらせ訴訟に、州議会や連邦議会が立法でどう対処したか。

(4)読んで感銘を受けた『ジャーナリズムの原則the Elements of Journalism)』著者のビル・コヴァッチ記者に会う

(5)カリフォルニア州政府を担当する記者団に、フリー記者やブロガーの会見へのアクセスについて取材。